同様の幼稚園、全土に相当数存在か

 話は童馨幼稚園と得得貝幼稚園の父母に戻るが、彼らは9月29日に蕪湖市政府が記者会見で述べた「9.19事件は食品安全事故には含まれない」との結論に対して不満を露わにした。しかし、言論統制が厳しい中国で、政府の結論に納得せずに抗議を継続することは得策ではない。彼らは子供たちが健康に育つことだけを念頭に、抗議を止めて現実を受け入れた。

 なお、9月29日付の“鳳凰網(ネット)”「安徽綜合」は、9月25日から童馨幼稚園と得得貝幼稚園は、蕪湖市党委員会、蕪湖市政府および関係部門の協力を受けて体制を一新し、鳩江区教育局から派遣された新しい園長を中心に立て直しを図るとし、この決定については父母たちも了解したと報じた。これで本件は一件落着となるのだと思うが、童馨幼稚園と得得貝幼稚園は梁愛蓮が経営していた民間の幼稚園のはずであるのに、新たな園長が鳩江区教育局から派遣されたというのはどういう意味なのだろうか。梁愛蓮が持っていたはずの経営権は蕪湖市政府によって没収されたということなのか。

 上述した9.19事件は安徽省の蕪湖市で発生したが、幼稚園児の言葉がたどたどしいのを良い事に、衛生上問題のある食事を園児に提供している幼稚園は、中国全土に相当数存在するものと考えられる。このため、不衛生な食事を提供されたことにより健康を害する園児たちが多数いる可能性は高いが、明確な証拠がないために、統計もなければ、事件が明るみに出ることもほとんどない。9.19事件は園児の父が子供の一言に異常を感じ取ったことで、実態が明るみに出た稀有な例であったといえる。中国政府が全国の幼稚園に対して適確な行政指導を行うことにより、園児に供する食事の質と衛生環境の改善が促進されることが望まれる。

園児が口にする食事の質と衛生環境の改善が望まれる(写真はイメージ)
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