園長は幼児教育一筋の成功者

 ところで、問題となった3カ所の幼稚園を経営していた園長の梁愛蓮とはどのような人物なのか。中国メディアが報じた履歴は以下の通り。

【梁愛蓮】
 梁愛蓮は蕪湖市では有名な人物で、かつて「蕪湖市民教育先進人」の称号を獲得したことがあり、地元テレビの番組で「蕪湖の優良青年」として取り上げられたこともあったし、彼女が書いた幼児教育の論文は何度も賞を獲得している。テレビが報じたところによれば、梁愛蓮は幼児教育に16年間従事し、4つの幼稚園を開設し、100人以上の職員を擁している。梁愛蓮は、中国の十大教育チェーンの一つである“紅纓教育”の蕪湖地区代表であり、9.19事件が起こった得得貝幼稚園は全国に3000軒以上ある紅纓系列の幼稚園の中で突出し成果を収めている幼稚園である。

 もし、この履歴が正しいのであれば、梁愛蓮は幼児教育の専門家であり、自ら4つの幼稚園を経営し、幼児教育で傑出した成果を収めていたことになる。そのような立派な人物が経営していた幼稚園のうちの3カ所で、消費期限切れや不衛生な食材を使って不潔な厨房で園児の昼食を作っていたことになる。恐らくもう1か所の幼稚園も似たり寄ったりだとは思うが、それはさておき、梁愛蓮が園児の親に「冷蔵庫内に消費期限切れの食材があるのはなぜか」と問われた際に、「食べ物を節約するため」と答えたのは笑わせるが、その後の調べで園長や教諭たちは全く問題のない食材で作った昼食を食べていたというから罪は重い。

 要するに、幼児教育一筋で成功者となった梁愛蓮でさえも、幼稚園児の健康よりも大事なのは金儲けであり、親にばれず、園児に急な変化が表れなければ、園児に何を食べさせようが構わないという、利己主義と拝金主義が合体した精神構造になっていることなのである。

 筆者は1985年から1990年まで北京に家族帯同で駐在し、息子は1989年6月4日に天安門事件(略称:六四事件)が発生する2カ月前の3月末に外国人の子供も入園が許されていた「北京第一幼稚園」を卒園したし、娘は同幼稚園の年中組に在籍していた。古い話で恐縮だが、その経験から言うと、当時北京第一幼稚園の食事は大変に美味しく、子供たちは昼食やおやつを楽しみにしていたし、子供を迎えに行く妻も度々ご相伴に預かり、調理方法などを聞いてきたりなどしていた記憶がある。北京第一幼稚園は中国の表看板である北京市を代表する幼稚園だから予算が潤沢にあったのかもしれないが、次代を背負う子供たちに美味しい物を食べさせようという意欲に溢れていた。

 中国で少子化が問題となっているこのご時世に、幼稚園児を食い物にして金儲けを目論み、園児の健康にまで影響を及ぼすとは、許しがたいことだが、その犯人を捕らえてみれば幼児教育の成功者だったとは笑いの種にもならないし、馬鹿馬鹿しくて洒落にもならない。