厨房の悲しい実態

 一方、当該父親の親戚が同じ鳩江区内にある得得貝幼稚園へ子供を通わせていたので、童馨幼稚園を経営する園長の“梁愛蓮”が、得得貝幼稚園の経営者でもあることが判明した。そこで、同父親は親戚に協力を要請し、9月20日に親戚が子供を得得貝幼稚園へ送った後に、得得貝幼稚園の食堂へ行き、食堂内にある厨房の衛生状況を調べるよう依頼した。親戚が調べたところでは、食堂にはハエが飛び回り、厨房は全体に不潔で、蛆が動いている場所もあり、米には虫が這いずり回り、ジャガイモは発芽してカビが生え、真空包装のソーセージは消費期限切れで変質していたし、レンジの周囲にはゴキブリが走り回っていた。

 冷蔵庫の中には数日前の「緑豆粥(かゆ)」が残されていたので、親戚がその場にいた食堂の職員に質問すると、職員は「緑豆粥は豚の餌で、園児に食べさせる物ではない」と答えたが、豚の餌なら冷蔵庫に入れておく必要はない。当該親戚は園長の梁愛蓮に「冷蔵庫内に消費期限切れの食品があるのはなぜなのか」と直接問い合わせたが、梁園長は「食べ物を節約するため」と答えたので、「すえたお粥も節約なのか」と詰問すると、梁園長は何も答えられなかった。親戚から報告を受けた当該父親は得得貝幼稚園の食堂に関しても厨房の非衛生な状況を蕪湖市食品薬品監督管理局へ通報し、併せて親戚の協力を得て、微信(WeChat)経由で得得貝幼稚園の父母たちへ厨房の悲しい実態を報告した。

 こうして童馨幼稚園と得得貝幼稚園の父母たちはそれぞれの幼稚園に集まり、子供たちの健康に関する情報交換を行った結果、子供たちに共通する一つの現象が浮かび上がった。

 それは頻繁に起こる腹痛であり、体格が劣る子供は下痢をすることだった。父母たちの動きを見て、情勢が悪いと気付いた両幼稚園の食堂に勤務する職員たちは、厨房を含む食堂内を徹底的に掃除して非衛生な状態を全て消し去った。20日午後に蕪湖市の“教育局”から2人の役人が両幼稚園を訪れて証拠取りの調査を行ったが、すでに食堂は徹底的な清掃が終わっており、何の証拠も集められなかった。また、同日に蕪湖市の“衛生局”からも役人が来て両幼稚園で写真を撮影して行ったが、写真では両幼稚園の問題点が何も分からないというのが親たちの見解だった。

 9月20日の夜、得得貝幼稚園の親たちの一部は、清掃が終わった厨房で冷蔵庫の上に蠢(うごめ)く数匹の蛆、冷蔵庫内に依然として残っている消費期限切れの食材、聞いたこともないような安価で無名な醤油や大豆油があるのを見て非常に憤った。それは、2つの幼稚園の学費は他の幼稚園に比べて相当に高額であるのに、園児に提供する食事の材料がこのような消費期限切れやカビが生えて変質している物とは一体何事かという怒りだった。怒り狂った彼らは得得貝幼稚園の正門を封鎖し、二日一晩にわたって園長の梁愛蓮を幼稚園に閉じ込めた。最後には地元の派出所が警官を派遣して梁愛蓮を幼稚園から救出した。

 9月21日にはポータルサイト“騰訊(Tencent)”傘下の開放プラットフォーム“企鵝号(ペンギン号)”にあるサイト「ハ百里晥江」<注>は、得得貝幼稚園の食堂内にある冷蔵庫上で蠢く蛆、冷蔵庫内の消費期限切れ食品、不潔な調理台やレンジの汚れなどを写真で公開し、中国全土に不衛生な幼稚園の実態を訴えたのだった。

<注> “晥江”は長江が安徽省の沿岸を流れる部分の名称であり、“八百里(400km)”はその距離を意味することから、「八百里晥江」は安徽省を表わしている。

 童馨幼稚園の親たちは子供たちの健康を気遣っていたが、9月22日に蕪湖市政府は童馨幼稚園の園児に親同伴で健康診断を受けさせるべく、多数の大型バスを手配した。バスは隣接する江蘇省“南京市”にある“南京市児童医院”へ向かう予定で走り出したが、途中で「南京市児童医院が受け入れてくれない」との理由で省都の“合肥市”へ行き先を変更した。多数の親たちが、合肥行きは幼稚園に有利な結果を出すための陰謀だと抗議し、子供を連れてバスから途中下車した。