翌18日、徐連彬は徐玉玉を連れて銀行へ行き、大学入学用に準備した9300元を徐玉玉名義の口座に預金し、キャッシュカードで引き出せるように手続きをした。徐連彬は徐玉玉に「大学が始まったら、口座から当面必要な金額を引き出し、残った額は生活費になる。それでは決して楽ではないが、毎月必ずカネを口座に入れるから待っていて欲しい」と述べたという。

支えの「助学金」が…

 8月19日の午前中に李自雲の携帯電話が鳴った。李自雲が電話に出ると、市政府の職員と名乗る男が「お宅には大学に合格した学生がいますか」と質問し、「いる」と李自雲が答えると、「ありがとう」と言って電話は切れた。李自雲は奨学金に関連する電話だと考えて、何も疑問を抱かなかった。同日の午後4時30分頃、李自雲が徐玉玉と共に外出から戻ると同時に李自雲の携帯電話が鳴った。李自運が電話に出ると、先方の男は奨学金がどうのこうのと話しを始めたが、詳細が分からぬ李自運はすぐに携帯電話を徐玉玉に手渡した。電話を受け取った徐玉玉はしばらく先方の男と話していたが、電話を終えた徐玉玉が李自雲に告げたのは次のような内容だった。

【1】電話の男は教育局の幹部と名乗り、2600元(約4万円)の奨学金が支給されるから、すぐにも銀行のATM経由で受け取るようにと言ったが、今にも雨が降りそうな天候だったので、徐玉玉は明日銀行へ行って受け取るようにすると答えた。

【2】すると、男は「今日(19日)が奨学金支給の最終日で、これを過ぎると奨学金は受け取れなくなる。午後5時までに銀行のATMに出向き、自分の指示に従ってATMを操作すれば奨学金を受け取ることができるから、大至急ATMのある銀行へ行き、ATMに着いたら自分の携帯電話に連絡を入れるように」と述べたという。

 徐玉玉は李自雲に早口で電話の要旨を伝えたが、その時すでに5時までに残された時間は30分もなかった。「もう時間がない」と焦る徐玉玉は雨合羽を持つと自転車に飛び乗り、自宅から一番近い、3km離れた場所にある“中国建設銀行”のATMへ向かった。この時、徐玉玉が少しでも冷静であったなら、奨学金は8月25日から9月11日までの間に支給されると言った教育局担当者の言葉を思い出したはずだが、午後5時を過ぎれば奨学金は受け取れなくなるという脅し文句に動転した彼女には疑念を抱く心の余裕はなかった。