2017年10月に中国政府の教育部、“国家統計局”、“財政部”が連名で発表した『2016年教育経費執行状況に関する統計公告』によれば、中国の教育への支出総額は2016年に3.9兆元(約64.4兆円)に達し、前年比で7.64%増大した。また、国家財政による教育経費支出額は3.1兆元(約51兆円)に上り、前年比で7.4%増大し、GDPに占める比率は4.2%となった。同公告は「GDPに占める比率が4%を超えたのは、2012年以降5年連続である」と誇らしげに述べている。

 2017年9月12日付の共同通信は、「2017年9月に経済協力開発機構(OECD)が発表した2014年の加盟各国のGDPに占める教育への公的支出の割合によれば、日本は3.2%で比較可能な34カ国中で最下位となった。OECD平均は4.4%で、日本が最低となったのは12年調査以来」と報じているから、中国の数字が正しいかどうかは分からないが、2016年に4.2%であった中国は日本よりもましということになるのかもしれない。しかし、国土が小さい日本にはバラックの校舎もなければ、義務教育の施設や教材に問題があるという話は聞いたことがないし、少子化による学校の統合や閉鎖で、立派な校舎が他の用途に転用されているくらいだから、物理的に日本が中国より劣っていることは有り得ない。

 話は再び耒陽市に戻る。9月3日、耒陽市党委員会ならびに耒陽市政府は転校を余儀なくされた父母たちから意見を聴取した上で、湖南師範大学附属中学耒陽分校の授業料を公立学校と同水準として、父母に余分な負担を増加させないことを決定した。メディアの報道には、授業料の不足分を誰が負担するかが記載されていないが、恐らく湖南省や耒陽市を管轄する“衡陽市”が資金援助を行うか、中央政府からの財政支援を頼ることになると思われる。

全国各地で同様の事態が顕在化か

 中国ではクラス定員が66人以上の“超大班額”と55人以上の“大班額”が大きな問題となっている。耒陽市はその代表的な例だが、同様な事態は全国各地で顕在化しており、早急な解消が望まれている。但し、問題を解消しようにも、多くの地方政府が耒陽市と同様に財政の逼迫に苦慮しており、確かな財源を確保しない限り、公立学校の校舎を増設したり、新規建設を行うことが出来ない状況にある。そうした現状にあるにもかかわらず、農民の都市部への転入は続いており、事態はますます悪化する傾向にある。

 9月6日に行われた中国政府“教育部”の記者会見で、スポークスマンの“続梅”は、“大班額”の解消には、学生の利益を確保し、確実に推進しなければならないと述べ、基本的措置として学校の新築、増築を行い、管理強化と資源(特に教員資源)の均衡化を図り、ホットな学校に学生が集中するのを避け、学校運営の質を向上させねばならないと表明した。

 しかし、“超大班額”や“大班額”を解消しようとするなら、習近平がアフリカに提供を表明した600億ドルの全部とは言わないまでも、その一部を国内の校舎建設に充当すれば解決できるはずである。それだけでなく、巨大な軍事費の一部を充当すれば不足している校舎は建設できるはずである。それが中国国民の偽らざる心情なのではなかろうか。

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