
2018年8月15日の午後、沖縄近海で台風18号が発生した。台風18号は東シナ海を北上し、8月16日午後3時には中国浙江省舟山群島の中心、“舟山市”の東方海上195kmに到り、8月17日午前4時5分に上海市“浦東新区”に上陸した。16日夜から17日午前中にかけて上海市の雨量は1時間に50~60mmに達し、局地的には100~150mmに達した。
台風18号を中国では台風“温比亜(ルンビア)”と呼ぶが、台風18号は気象データが残る1873年以来で直接上海に上陸した5番目の台風であり、過去1カ月間に直接上海に上陸した3番目の台風であった。要するに、過去145年間に上海に直接上陸した台風は5個しかなかったのに、その中の3個が2018年7月中旬から1カ月間に集中したというのだから、今年は史上稀に見る異常気象の年と言わざるを得ない。
この台風18号の影響は山東省にも及び、8月18日には山東省の各地で“暴雨傾盆(たらいをひっくり返したような暴雨)”となり、20日まで降り続いた雨は地域によっては1日に200mm以上に達した。“弥川”流域にある3つの“水庫(ダム)”、“冶源”、“黒虎山”、“嵩山”は貯水量が大幅に上昇してダム本体への圧力が増大したため、21日午後6時30分に3つのダムは一斉に放水した。この結果、弥川の下流に位置する“寿光市”で大規模な洪水が発生した。
寿光市は、山東省中北部に位置する“濰坊市”の管轄下にあり、常住人口が117万人の小都市である。現在、同市の産業構造は、第一次産業:11%、第二次産業:43%、第三次産業:46%となり、農業・水産・畜産などを主体とする第一産業は縮小している。しかし、同市はキュウリ、ニラ、ネギ、にんじん、セロリ、トマトなどの特産野菜や、甜瓜(まくわうり)、黄桃などの特産果実を産出し、シジミ、ハマグリ、カニ、シラス、エビなどの水産物でも名高い地域であり、山東省の農水産物の生産基地として機能している。このため、寿光市で大規模な洪水が発生したというニュースが流れると、遠く北京市内の野菜・果物の価格が大きく上昇した。
今回の洪水で寿光市の中心部では大きな被害は確認されていない。被災したのは弥川の下流域の堤防の近い部分に居住する農民や淡水養殖を行う漁民たちだった。彼らは濰坊市水利局が発表したダムの増水による放水通知を知っていたが、まさか21日の午後6時30分に3つのダムが同時に弥川へ放水するとは思ってもいなかったのだ。彼らは夜の暗闇の中で急激に水嵩を増す弥川の変化に気付かぬうちに、洪水に襲われた。人々は命からがら避難することはできたものの、住宅は水に漬かり、畑や淡水養殖池は水没し、壊滅的な被害を受けた。
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