『四川大地震寄付金の流れに関する研究報告』は公式の文書であることから、個々の事項について具体的な内容を記述せず、判明した使途不明金の額も敢えて記載しなかったし、寄付金を食べるネズミ(汚職役人)に関する具体的な指摘も行わなかった。用途の明細が不明確な501億元がどれだけネズミに食われたかは分からないが、四川大地震を好機と捉えて私腹を肥やしたネズミが大手を振るって闊歩していることは間違いのない事実である。

 2016年5月15日付のブログ「渝州見聞」は、「四川大地震の巨額寄付金をどんぶり勘定にしてはならない」と題する文章を発表して、上述の『四川大地震寄付金の流れに関する研究報告』に言及したが、その文末で次のように述べた。すなわち、「全ての寄付は3つの公開原則に基づいて運行すべきである。個々の寄付について収支を明確にして、その流れを明らかにし、寄付者には安心を、そして、困窮する弱者にはやすらぎを与え、絶対にどんぶり勘定を許してはならない」。

中国進出企業の寄付金は大丈夫か

 ネット上では九寨溝地震の被災地に対する黄暁明の寄付金50万元を巡ってネットユーザーが賛否両論を熱く戦わせているが、九寨溝地震の被災地に対する寄付を表明する企業は次々と名乗りを上げている。8月15日までに公表された主な寄付者は以下の通り。
 A)米国アップル:700万元(約1億1200万円)
 B)“中国三星(中国サムソン)”:1000万元(約1億6000万円)
 C)ポータルサイト“騰訊(QQ.com)”の騰訊基金会:1000万元
 D)コングロマリットの“大連万達集団”:1000万元

 これら大手企業にとって被災地への寄付は中国で順調にビジネスを展開する上で必要不可欠な要素であり、避けて通れない関門と言える。但し、かれらの寄付金がネズミに食われることなく、被災地の救済と再建に100%投入される保証はないのが実情である。

 それはさておき、四川省では2000年以降、大規模地震が多発している。2001年2月の“雅江地震(M6.0、雅江県)、2008年5月の汶川大地震(M8.2、汶川県)、2008年8月の攀枝花地震(M6.1、攀枝花市)、2013年4月の雅安地震(M7.0、雅安市)、そして2017年8月の九寨溝地震(M7.0、九寨溝県)と続いている。昔から四川省は大規模地震の発生が多いと言われて来たが、上述の通り2000年以降は発生の頻度が増え、その間隔が狭まっている。世界最大のダムである“三峡大壩(三峡ダム)”は1995年に着工して、2006年5月に竣工した。同ダムの蓄水容量は100億m3以上と巨大であり、その蓄水の重量がダム底や周囲の地盤に与える圧力は計り知れないものがある。一部の専門家は近年の大規模地震の頻発は三峡ダムの影響によるものではないかと警鐘を鳴らしているが、中国政府はそうした声を完全に無視している。

 四川省では2017年6月24日に、九寨溝県から南西に直線距離で140km離れた同じくアバ・チベット族チャン族自治州に属する“茂県”で大規模な山崩れが発生し、10人が死亡し、73人が行方不明になった。この山崩れも三峡ダムの影響によるものかは定かでないが、汶川大地震が発生した際にも、三峡ダムの影響は盛んに論議された。今後も四川省では大規模地震が頻発する可能性は高い。人災によって桃源郷の九寨溝が破壊されたのであれば悲しい限りである。頻発する大地震は天が身勝手な自然の破壊者を罰しているのかもしれない。