さて、2017年8月8日21時19分、九寨溝が所在する九寨溝県漳扎鎮を震源地とする大地震が発生した。同地震の規模は“中国地震局”の発表ではマグニチュード(M)7.0、震源の深さは20kmであり、米国地質調査所(USGS)の発表ではマグニチュード6.5、震源の深さは36kmであった。本震後の余震は9分後の21時28分から始まり、8月10日10時までに1741回に及んだ。震源地が九寨溝の所在地であることから、同地震は“2017年九寨溝地震”と命名された。

死亡25人、負傷者493人、行方不明者5人

 8月13日までに判明した九寨溝地震による死傷者数は、死亡25人、重傷者45人を含む負傷者493人、行方不明者5人であった。なお、死者の内訳は、旅行客12人、地元民12人、身元不明1人。行方不明者の内訳は、地元民4人、旅行客1人。また、8月11日までに6万1500人の旅行客(含外国人126人)と出稼ぎ労働者が九寨溝から退去し、2万3477人が一時避難を完了した。

 8日の地震発生時、九寨溝に滞在していた観光客は約3万8000人であった。彼らは九寨溝周辺のホテルに分散して宿泊していたが、そのホテルの中で被害が甚大だったのは“九寨天堂洲際大飯店(InterContinental Resort Jiuzhai Paradise)”(以下「天堂ホテル」)だった。天堂ホテルは九寨溝の入り口から20kmの場所にある4つ星ホテルで、地震発生時には宿泊客および従業員を合わせて2000人以上がホテル内にいた。天堂ホテルはモダンな総ガラス張りの巨大ドーム2つと小型の丸型ドーム1つを持つことで知られていたが、地震によってホテルのロビーとして使われていた巨大ドームのガラスが完全に破壊された。このため、天井や壁面から崩落するガラスの破片によって死者3人(宿泊客1人とホテル従業員2人)、負傷者18人を出した。

 地震発生が21時19分であったため、宿泊客がホテル内にいたことで人的被害は少なくて済んだが、これがもし昼間だったら、九寨溝を散策する観光客に多くの死傷者を出したことは間違いなく、不幸中の幸いであった。しかし、地震は九寨溝の名勝に多大な被害をもたらした。各所で湖の決壊が起こり、水が流出した湖は無残な惨状を呈したし、山崩れによって水の通路を塞がれた滝は干上がった。また、山崩れによって土砂や樹木が湖に流れ込んだことにより、湖水は白く濁り、従前のエメラルドグリーンを想像することすら出来ない状態になった。人気の高い火花海は堤防が決壊して干上がり、石灰石を堆積した白い湖底を露呈した。諾日朗瀑布は水流が途絶えて干上がった。九寨溝が以前の美しい風景を取り戻すことは極めて困難な状況にある。