国家宗教事務局の声明
8月2日、中国共産党“中央統一戦線工作部”傘下の“国家宗教事務局”は本件に関し以下の声明を出した。
中国仏教協会会長の学誠を告発した件に関する返事
我が局は、インターネット上で中国仏教協会会長の学誠を告発した問題の反映を非常に注目し、高度に重視している。我が局はすでに告発資料を受領済で、すでに事実確認の調査を開始している。
国家宗教事務局 2018年8月2日
この告発問題がどのように決着するかは分からない。但し、情報筋によれば、釈学誠が頼みとするのは“国家領導人(国家指導者)”であり、それは国家主席の“習近平”だという。習近平の一家は仏教信者で、釈学誠とは習近平の福建省時代(1985~2002年)に知り合い、釈学誠は習家の全員と非常に良い関係にあったので、釈学誠は習近平という後ろ盾があるので何者をも恐れない。釈学誠は政府の役職をいくつも持ち、非常に多くの部門が彼の後ろ盾が誰かを知っているので、告発者が圧力を受けていることは意外ではないのだという。
釈学誠が習近平の家族やその他高官の信頼を得ているのは、その“仏性(御仏の心)”によるが、今回の告発によって、彼が“假和尚(似非坊主)”であり、弟子や高官とその家族を騙していたことが白日の下になった。匿名の告発者が述べているように、2018年2月に告発者が中央紀律委員会などの関係部門へ釈学誠を告発した時点で、国家宗教事務局は事態を認識していたにもかかわらず、半年後に告発文がネット上で拡散されたのを見て、慌てて調査に着手したのだった。すでに中国仏教界の最高責任者がセクハラ問題で告発されたことは世界中に報道されており、習近平という後ろ盾があろうとも問題の解決を迫られたのである。この告発によって釈学誠は習近平という後ろ盾を失うことは十分考えられる。
さて、今回の釈学誠と同様に、中国仏教界で“偽和尚”あるいは“花和尚(生臭坊主)”と呼ばれて久しい人物に、中国仏教協会副会長で、あの少林拳で名高い少林寺の住職である“釈永信”<注2>がいる。釈永信も“花和尚”と批判を浴びながらも、依然として中国仏教協会副会長と少林寺住職の地位を維持しているから、釈学誠に対する告発もうやむやにされる可能性は高い。しかし、中国仏教協会の会長と副会長の2人がそろって“花和尚”というのでは、中国の仏教界は壊滅状態にあるのではないだろうか。仏教指導者が敬虔な信者を騙してお布施で私腹を肥やし、尼僧を騙して女色を貪るようでは、世も末である。
“釈迦牟尼(お釈迦様)”は2500年前に「自分が亡くなった後、1000年は正法(しょうほう)の時代<教えや修行が正しく伝わって残っている時代>、次の1000年は像法(ぞうほう)の時代<教えや修行が像(かたち)だけ残って本質が乱れて行く時代>、次の1万年は末法(まっぽう)の時代<ただ教えだけが残っている時代>になる」と予言した<注3>。今の中国仏教界を見ると、末法の時代が始まったように思える。
中国寺院の多くは“揺銭樹(カネのなる木)”に変わり、“偽和尚(似非坊主)”が人を騙し、女色に溺れ、“胡作非為(勝手気ままに悪事を働く)”の地になってしまっている。これでは仏教の教えすら残らず、お釈迦様も末法の時代よりも悪いと嘆いていることだろう。
西方極楽浄土における最高の仏は“阿弥陀佛(あみだ様)”であり、その中国語の発音は“emituofu”だが、ネット上には釈学誠のセクハラをもじって“阿MeToo佛”(発音:emetoofu)という文字が躍っている。米国で始まった#MeToo運動は、遂に中国の仏教界にも浸透したのである。


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太田出版 2018年7月10日刊
記事掲載当初、「少林寺拳法」としていましたが「少林拳」の誤りです。本文は修正済みです。お詫びして訂正します。 [2018/8/10 17:20]
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