欠陥ワクチンが山東省政府傘下の疾病予防センターを通じて流通し、21.5万人もの児童に接種されたことに、子供を持つ親たち、特に山東省の親たちは激しいショックを受けた。さらに、子供たちの生死にかかわる問題を引き起こした長春長生に対して吉林省食品薬品監督管理局が科したのが、わずか344万元(約5680万円)の罰金であったことは人々を驚かせ、中国の世論は沸騰し、その矛先は吉林省食品薬品監督管理局に止まらず、中国政府の監督管理能力へも向けられた。

 2008年8月に開催された北京オリンピックが閉幕した直後の9月に、中国では化学物質の“三聚氰胺(メラミン)”が混入した粉ミルクを飲んだ乳児約4万人が腎臓結⽯を発症した、「2008年中国奶粉汚染事件(中国粉ミルク汚染事件)”」が発生した。国民の不満は中国共産党と中国政府へ向かい、党と政府は事態の収拾に全力を投じ、国民の信頼回復に腐心した。今回の欠陥ワクチン事件は接種児童の数が21.5万人で、万一にも多数の児童に欠陥ワクチンによる影響が出たら一大事である。党と政府内部には緊張が走った。

習近平が管理体制の強化を指示

 7月23日、アフリカのルワンダを訪問中の中国国家主席“習近平”は、中国国内で欠陥ワクチン事件が発生したとの報告を受けて、「“悪劣, 令人蝕目驚心(悪らつで、目をそむけたくさせる事件だ)”」と述べ、「“猛薬去疴、刮骨療毒(劇薬で病を治し、骨を削って毒を治療する)”決意で、ワクチン管理体制を完璧なものとし、安全の最低ラインを断固死守せよ」と強調した。

 一方、“国務院”総理の“李克強”は、欠陥ワクチン事件の発生を知ると即座に指示を出し、国務院は直ちに調査チームを派遣し、ワクチン生産・販売などの業界全体の徹底調査を行い、早急に実態を明らかにするよう命令すると同時に、「“不論渉及到哪些企業、哪些人都堅決厳懲不貸、絶不姑息(たとえどのような企業、どのような人に関係しようとも、容赦することなく厳罰に処し、絶対に目こぼしするな)”」と発破を掛けた。

 長春長生の3種混合ワクチンに問題があるなら、その代用品として考えられるのは中国政府直属の“中央企業”であり、湖北省“武漢市”を本拠とする“武漢生物製品研究有限責任公司”(以下「武漢生物」)の3種混合ワクチンである。

 ところが、湖北省食品薬品監督管理局が7月27日にネット上で公表したところによれば、上述した2017年11月3日付で発表された国家食品薬品監督管理局の公告には、武漢生物が2016年に生産した3種混合ワクチン(ロットNo.201607050-2)約40万本は薬効が不合格であることが判明したという旨の記載もあったのだという。

 当然ながら、これら欠陥ワクチン約40万本は廃棄処分を命じられたはずだが、武漢生物は欠陥ワクチンを平然と重慶市疾病予防センターと河北省疾病予防センターへそれぞれ19万本、21万本を販売したのだという。この違法行為に対して、武漢市食品薬品監督管理局は、2018年5月29日付で違法所得の没収と罰金を科したと報じられているが、罰金の金額は非公開であり、その内容を明記しているはずの行政処罰決定書も公表されていないという。

 なお、7月27日、湖北省食品薬品監督管理局は、武漢生物が生産した3種混合ワクチン(ロットNo.201607050-2)が不合格となった原因は、ワクチンを小分けする設備が短時間故障したことにより、混合液が不均一なものとなったためと公表した。

 上述した長春長生製の3種混合ワクチン25万本と武漢生物製の3種混合ワクチン40万本について、長春長生と武漢生物の両社は人体に対する安全性に問題はないと言明している。だが、果たして両社が言うように人体には何も影響がないものなのか。あるいは、国家と結託して、たとえ多少影響が出たとしても、別の病気によるものとして処理するつもりなのか。ワクチンを接種した児童の多数に共通した症状が出ない限り、その原因が欠陥ワクチンによるものだと提起することは困難である。

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