大賢村の村民にしてみれば、停電の発生で電気が通じていなかったばかりか、“微博”など知らない者も多く、夜10時30分に“微博”を通じてダムの放水情報を流したとしても、果たしてどれだけの人が“微博”に目を通すだろうかと考えるのが筋だろう。市民を指導すべき立場にある者がそんな当たり前のことに気付かず、“微博”によるダムの放水通知しか行わなかったのは信じ難い愚挙といえる。これは邢台市政府の役人の怠慢によるものであり、その怠慢が大賢村だけで数百人の尊い命を奪ったのだった。

 邢台市政府のウェブサイトは7月26日付の地元紙「邢台日報」の記事を掲載して、7月25日15時までの時点における邢台市の洪水被害について次のように報じている。

 全市の被災人口172.7万人、死亡34人、行方不明13人(このうち経済開発区:死亡17人、行方不明1人;“橋西区”:行方不明2人;邢台県:死亡13人、行方不明9人;“内丘県:死亡3人;“臨城県”:死亡1人、行方不明1人)。緊急避難者11.6万人、倒壊家屋2万8764室、損壊家屋2万6305室。洪水による直接経済損失50.2億元(約803億円)、そのうち農業損失9.1億元(約146億円)、インフラ損失30.3億元(約485億円)、家庭財産10.3億元(約165億円)。

 この記事は「邢台日報」の記事を引用する形をとっているが、実際は邢台市政府の統計と見てよいだろう。そうなると、大賢村が属する邢台県の死者と行方不明者はそれぞれ13人と9人ということになる。果たしてこの数字は正しいのか。大賢村の村民が主張している死者数百人というのは偽りなのか。大賢村自体が死者・行方不明者の数を独自に発表している形跡はないので、どちらの数字が正しいかは判断できない。しかし、大賢村の村民たちが王清飛の「死傷者は出ていない」発言にあれだけ憤り、交通遮断の挙に出てまで市政府に対する抗議を行っているところを見ると、村民の主張が正しいように思われる。死者数の過少報告は中国の災害で毎度のように行われていることであり、驚くには当たらない。

被害写真は瞬時に削除

 7月24日、ネットの掲示板には七里河の氾濫による洪水で死亡した子供たちの遺体が泥の中に横たわる写真がいくつも掲載された。いたいけな子供たちの悲惨な姿は見る者に人の世の無情さを感じさせたが、これらの写真は瞬時に削除された。写真が削除されたことを知ったネットユーザーたちは、“微博”や“微信”の中でこうつぶやいた。

 2015年9月にトルコの海岸に打ち上げられた溺死したシリア難民の男児(3歳)の写真が世界中で報じられた際には、中国では国際社会の非情さを強調するかのように当該写真がテレビやネットのニュースサイトで何回も報じられた。ところが、中国国内の洪水で溺死した子供たちの写真は国民の目に触れないように瞬時に削除された。これは一体どういうことなのか。