中国政府のパンダ外交は歴史的に見て以下の3段階に分けることができる。

【第1段階】1949年~1971年(合計8頭)
 中国の同盟国であったソビエト連邦(1頭)および北朝鮮(6頭)へ友好の証として贈られた。また、1958年にはオーストリアの動物商経由で1頭がロンドン動物園は販売された。

【第2段階】1972年~1983年(合計16頭)
 1972年2月、ニクソン米国大統領が訪中した際に中国政府が雌のリンリン(玲玲)と雄のシンシン(興興)の2頭を土産として贈呈したのを皮切りに、日本:4頭(ランラン、カンカン、ホァンホァン、フェイフェイ)、フランス:2頭、英国:2頭、メキシコ:2頭、スペイン:2頭、西ドイツ:2頭がそれぞれ友好の証として贈呈された。

【第3段階】1984年~現在まで
 1984年にパンダがIUCNのレッドリストで「絶滅危惧種」に指定され、ワシントン条約で最高ランクの「付属書Ⅰ(今すでに絶滅する危険性がある生き物)」に格上げされたことにより、「商業のための輸出入は禁止され、 学術的な研究のための輸出入などは、輸出国と輸入国の政府が発行する許可書が必要」となった。このため、学術研究を名目としてパンダを外国に貸与し、その見返りとして相手国から中国の野生動物保護資金の供与を受ける形式を採ることになった。

アドベンチャーワールドは11頭を返還

 2017年6月末時点で中国から世界各国(含香港およびマカオ)の動物園に研究目的で貸与されているパンダの合計は67頭であると思われるが、その明細は下表の通り。

中国から貸与されているパンダの国別分布
(出所)パンダ研究所「パンダのいる動物園」から筆者作成

 なお、貸与期間中に生まれたパンダの子供は、原則として誕生から2年以内に中国へ返還する取り決めになっている。このため、上表の(子供)に内数として記された子供の数は常に変動する。総数である67頭から子供の19頭を差し引くと、世界中の動物園にいる大人のパンダは48頭になる。

 ところで、中国国内で何か大きな問題が起こると、中国政府は国民の目から当該問題をそらそうと、反日を煽ることがしばしばある。それにもかかわらず、その日本がパンダの貸与数では米国の13頭に次ぐ9頭で第2位というのは意外に感じられる。日本の動物園でパンダがいるのは、上野動物園のほかに神戸市立王子動物園(雌1頭)と和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド(雄1頭、雌1頭、子供の雌3頭)がある。特に、アドベンチャーワールドは2017年6月に3頭の子供パンダ(6歳、6歳、4歳)を中国へ返還しており、2004年から2017年6月までに中国へ返還した子供の数は合計で11頭にも上っている。6月12日に上野動物園でパンダの子供が生まれたとメディアは大々的に報じたが、アドベンチャーワールドは長年にわたって積み上げた研究成果を踏まえて、多数の子供を誕生させているのである。