習近平主席は7月5日、ベルリン動物園のパンダ館開館式典にメルケル首相と共に出席した(写真:ロイター/アフロ)
習近平主席は7月5日、ベルリン動物園のパンダ館開館式典にメルケル首相と共に出席した(写真:ロイター/アフロ)

 6月24日の午後3時30分、ドイツの首都ベルリンにある「ブランデンブルグ空港」のカーゴセンターに1機のルフトハンザ・カーゴの貨物専用機が到着した。同機は中国の四川省“成都市”から12時間かけて飛来したもので、その貨物室から慎重に運び出されたコンテナの中には檻に入れられた2頭のパンダがいた。それは、4歳の雌パンダ“夢夢(モンモン)”と7歳の雄パンダ“嬌慶(チャオチン)”の2頭で、彼らは中国・ドイツの友好の証として、成都市に所在する“大熊猫繁育研究基地(パンダン繁殖育成研究基地)”から送られたものだった。

モンモンとチャオチン、年100万ドルでベルリンへ

 この日、空港には中国駐ドイツ大使の“史明徳”とベルリン市長のミヒャエル・ミューラーをはじめとする百人以上のドイツ官僚やメディア記者が2頭のパンダを出迎えた。空港での歓迎式の中で、史明徳は、「今年は中国・ドイツの両国にとって国交樹立45周年に当たり、パンダが友好の使者としてドイツ国民にかわいがってもらえることを希望する」と述べた。また、ミューラー市長は、パンダ来訪に尽力したドイツ・中国双方の関係機関並びに関係者に感謝を表明すると同時に、2頭のパンダがベルリンに新たな魅力を増すでしょうと述べた。

 ドイツではベルリン動物園にいた雄パンダのパオパオ(宝宝)が2012年8月22日に死亡してから5年以上にわたってパンダの不在が続き、ドイツ国民は新たなパンダの来訪を心待ちにしていた。このため、ベルリン動物園は中国側と協議を続け、ベルリン動物園が園内に1000万ユーロ(約13億円)を費やして敷地面積5500m2の広さを持つパンダ館を建設すること、パンダ2頭を研究目的で15年間借り受ける代償として中国側へ毎年100万米ドル(約1.14億円)の野生動物保護資金を支払うことで合意した。その合意に基づき、中国から送られて来た2頭のパンダがモンモンとチャオチンであった。

 7月7~8日にドイツのハンブルグで開催された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)への参加を主目的として、7月4日に最初の訪問国ロシアからドイツ入りした中国国家主席の“習近平”は、7月5日にベルリンを訪問し、同日にベルリン動物園で開催されたパンダ館の開館式典にドイツのメルケル首相と共に出席した。式典で習近平は「2頭のパンダは中国・ドイツ両国の距離をさらに縮める友好大使の役目を果たしてくれるだろう」と述べ、メルケルは「ドイツと中国の交流の中でパンダは両国民の友好を深める重要な役目を果たして来た。モンモンとチャオチンは両国の友好がさらに発展する証である」と述べた。

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