その処罰決定書には、呉永厚が「女子職員宿舎109号室で寝ている李依依に対し唇で李依依の額、顔、唇などに約3分間接吻したが、それを羅宇に見つかった」と供述したことが明記され、呉永厚の行為は『治安管理処罰法』第44条規定の“猥褻(わいせつ)”を構成するとあった。一方、2017年7月23日、“慶陽市教育局”の党委員会は、呉永厚に対する行政処分を決定し、彼を“教育技術7級”から“教育技術8級”へ降格すると同時に慶陽六中から配置転換させることにした。

処罰の理不尽さに失望

【11】呉永厚に対する処罰がわずか10日間の行政拘留であったことを知った李依依は、その理不尽さに失望すると同時に憤った。娘を慰める目的もあって、李明は改めて慶陽市の“西峰区検察院”に対して事件を通報した。事件は受理されたが、2018年3月1日に西峰区検察院は呉永厚を不起訴とする旨の決定を下した。その理由は、「呉永厚の行為は情状が極めて軽微であり、李依依の現在の病状が呉永厚の行為と直接の因果関係を持つという証拠はないので、犯罪を構成しない」という内容だった。

【12】2018年6月中旬、李依依は西峰区検察院の不起訴決定書を見つけて非常に怒った。6月20日の正午、李依依は家族と一緒に昼食を食べた後に、アルバイトの仕事に行くと言って家を出て、その足で麗晶公寓8階に到り、閉店した“火鍋店(寄せ鍋)”の窓から小さなベランダに出た。そして、幅わずか30cmのベランダの縁に腰掛け、不安定な状況で4時間半を過ごした。夜7時頃、消防隊員が李依依を救出しようと手を伸ばした瞬間、彼女は空中に身を躍らせたのだった。午後4時40分に李依依がSNSに投稿した文章の末尾には“一切都結束了(全てが終わった)”と書かれていた。

【13】6月25日の夜、“慶陽市共産党委員会宣伝部”は記者会見を開催し、出席した市公安局西峰分局の副局長“曹懐玉”は、李依依がビルから飛び降りた原因が以前にクラス担任が彼女に行った猥褻行為と直接の関係があるかどうかを現在調査中である旨を表明した。

 長くなったが、上記が多くの自殺志願者が模倣した飛び降り自殺騒動の発端となった19歳の女性が飛び降り自殺を遂げるまでの全貌である。この事件は2018年4月20日付の本リポート「中国の名門大学を騒がせたセクハラ告発運動」で報じた中国におけるセクハラ告発運動(“Me Too Movement”)に関連する事件として中国の世論を沸騰させた。

 また、野次馬が飛び降りようとする自殺志願者に対して「早く飛び降りろ」などと志願者を刺激するような言動を行ったことが、問題視された。「中華民族は同情心が豊富な民族であったはずだが、一体全体これはどうしたことか」、「一つの生命に対して、どうしてかくも冷酷になれるのか、中国伝統の道徳はどこへ行ったのか」というのが、中国の評論家たちの意見である。中国国民の大多数は生命の尊厳をわきまえているが、一部の社会に不満を持つ人たちはそのはけ口を他人の不幸にぶつけるのである。たとえそれが、死を目前にしている自殺志願者であっても。