【14】公安部門は、北京華珏が医薬部外品を薬品と偽って対外的に宣伝を行い、偽薬を販売したことは極めて重大な犯罪であると認定し、北京華珏の責任者である“張某”を偽薬販売罪で逮捕した。裁判では、張某に対して偽薬販売罪により懲役3年、執行猶予3年、罰金20万元(約320万円)の判決が下された。なお、事件発覚後、北京華珏の被告人の1人が北京華珏を代表して不当利益400万元(約6400万円)を返却しており、これが張某に対する刑罰を軽くしたものと思われる。

【15】こうして劉洪濱が出演したテレビCMで偽薬の通信販売を行っていた北京華珏は摘発されたが、彼女を除いた「四⼤神医」のうちの3⼈が出演したテレビCMの通信販売も取締りを受けている。李熾明がテレビCMで宣伝していた“一子三葉茶”は、2014年に山東省の“濰坊市食品薬品監督管理局”によって重大な違反公告と判定された。王志金が宣伝していた“九千堂化糖老方”は違法公告の容疑で、湖南省の“株洲市食品薬品監督管理局によって取調べを受けた。また、高振宗がテレビCMで宣伝していた“蒙薬名目二十五味丸”は虚偽公告により“河北省食品薬品監督管理局”および広東省の“広州市工商行政管理局”の取り締まりを受けた。

11万円でCM枠を買って…

 それにしても、北京華珏がわずか3か月で偽薬を670万元(約1億円)も売り上げていたとは驚きである。テレビ局のCM枠は、テレビ局の格によって異なるが、“県”レベル<注2>のテレビ局では6か月間で7000元(約11万円)程度というから、各地のテレビ局でCM枠を購入してもさほど大きな金額にはならず、北京華珏が返却した400万元(約6400万円)以上の利益を得ていたことは想像に難くない。なお、670万元は日本円に換算すると約1億円だが、中国の庶民感覚では670万元は日本円で3億円以上の金額になるはずである。

<注2>中国の県は、「省・自治区・直轄市」、「市」に次ぐ行政区分。

 病気を抱えて藁にもすがる思いで神医が推奨する妙薬を購入した人々を騙すとは、北京華珏を始めとする詐欺師たちは度し難い存在と言える。しかし、この種の詐欺師たちはいくら取り締まっても雨後の筍で、次々と出現して消滅することはないのが実情である。

 ところで、偽薬や薬の功能を誇張したテレビCMに出演して詐欺師たちの片棒を担いだ「七つの顔を持つ神医」たちが処罰されることはないのか。この事件を報じた中国メディアの多くに目を通したが、彼ら「偽神医」が罰せられたという記述はどこにも見つからなかった。役者である神医たちはCM監督から要求された演技をしただけで、詐欺には加担していないということなのだろうか。「四大神医」と呼ばれる役者たちは、今後もテレビCMに出演して、神妙な顔で新たな偽薬を宣伝し、視聴者の購買意欲を刺激し続けることだろう。

 つまるところは、「騙す人が悪いのか、騙される人が悪いのか」という問題になるが、病気を抱えて苦しむ人たちを騙す方が悪いことは明らかである。その片棒を担いでいることを「四大神医」も知っているはずで、役者だから監督から要求されるままに演技したでは済まされない。「四大神医」にも厳罰を科すべきだと思うが、中国には彼らに適用する刑法はないのだろうか。少なくとも、日本の「七つの顔を持つ男」は正義と真実の使徒であった。