【3】5月28日、ある不愉快な出来事が吉林省“長春市”に住むネットユーザーのハンドルネーム「@験氛」を激怒させた。彼女の父親はいわゆる“三高(高血圧、高血糖、高脂血症)”患者で、家族は父親の健康を気遣っていた。ある日テレビを見ていた父親が、劉洪濱が出演した蒙薬⼼脳⽅の通信販売コマーシャル(CM)に興味を示していたようなので、気を利かせた@験氛の母親がテレビに表示された電話番号へ電話を入れて、1クール(治療期間)分の蒙薬心脳方を3480元(約5万6000円)で購入した。しかし、送付されて来た蒙薬心脳方が届くと、父親はそんな物は要らないと断固拒否したため、注文をキャンセルして返品せざるを得なくなった。父親が販売側へ電話を入れたところ、電話を受けた“馬”という姓の主任が愛想良く応対したが、父親から注文キャンセルという話が出ると、がらりと態度を豹変させて父親に罵声を浴びせた。これで終わりかと思ったら、数分後には馬主任から電話が入って口汚くののしり、これがその後数日間も続けられた。

その実体は“群衆演員”

【4】6月21日、@験氛からの通報を受けたネットメディア“紅星新聞”の記者が蒙薬心脳方の購入者として販売側へ電話を入れたところ、電話に出た馬主任は自分が蒙薬心脳方を販売していると認めた上で、本当の姓は“劉”で責任者だと名乗った。記者は電話で巧妙に劉責任者を誘導して話を聞き出したが、それは次のような内容だった。すなわち、蒙薬心脳方の通信販売CMは広告会社が作っている。劉洪濱が医学専門家として出演している薬の通信販売CMは各地のテレビ局で放映されているが、あいつの肩書はみんな偽物だ。蒙薬心脳方は劉責任者の家の先祖伝来の処方薬で、遼寧省“阜新市”の“阜新蒙薬有限公司”(以下「阜新蒙薬」)に生産の権限を授けている。そこで、記者が阜新蒙薬に連絡を入れて話を聞くと、阜新蒙薬は「我々は生産企業であって、テレビCMは我々が作っているものではなく、代理店が作っている」と答え、「我々もテレビCMに出ている劉洪濱という人は知らない」と述べたのだった。

【5】それでは“神医”の劉洪濱とはどのような人物なのか。テレビCMを通じた薬の通信販売関係者によれば、劉洪濱は北京市に居住する定年退職者で、退職後はずっと“群衆演員(三流役者)”に身を置き、命じられた通りに演技する老人の役者なのだという。神医の背後には製薬会社、販売業者、CM制作会社、公告代理店などを含む完成された産業チェーンが存在する。CM制作会社の監督によれば、劉洪濱が一本のテレビCMに出演して得られる報酬は2000元(約3万2000円)前後に過ぎないという。テレビCMは1つの商品につき長短や仕様を変えて11通りの映像を撮影すると同時に、当局の監視を免れるために法律に準拠した正規版を作って万一に備えるので、最終的には12通りのCMを制作する。