【9】最も重要な事は、百度が広告主の資格審査を従来から全く行わぬまま、オークションで高価格を提示する莆田系医院を優遇し、彼らのインチキ商売に手を貸し、彼らを野放しにしたことだった。百度と莆田系医院の密接な関係は、2003年に百度が広告枠のオークション制度を開始した時から始まり、すでに13年が経過している。百度はカネが儲かるという理由だけで、広告主の資格審査を行わぬまま、莆田系医院に便宜を図ってきたことは明白だった。その結果が百度の検索結果を信じた魏則西を死に追いやったといっても過言ではない。

【10】こうした背景を知った世論は激高し、百度の責任追及を求める声が沸騰した。世論の圧力を受けた百度は医院広告の担当責任者を解雇することで事件の沈静化を図ったが、世論はその姑息な対応に怒りをさらに強めた。世論に押された中国政府および北京市の関係部門は5月2日に調査チームを組織し、“魏則西事件”に絡んで百度の広告枠オークション制度の調査を行った。5月9日、調査チームは調査結果を発表し、百度に対して医療広告の全面的見直しと広告枠オークション制度の廃止を含む業務改善を勧告した。一方、同調査チームは百度と並行して武警第二院の調査も実施し、武警第二院は営業停止を命じられた。

無法の放置、撲滅なるか

 『三国志・蜀志・諸葛亮伝』に「死せる孔明生ける仲達を走らす」という言葉がある。これは偉大な諸葛孔明は死んでも、敵の仲達を恐れさせて敗走させたということで、「死してもなお影響力のあること」を意味する。魏則西は諸葛孔明のような偉人ではないが、死を前にして“微信”に書き込んだ文章が死後に注目されたことで、百度の医院広告の不条理や莆田系医院によるインチキ治療が暴き出される切っ掛けとなった。

 百度は調査チームの勧告に従って業務改善を行うだろうが、問題は民営医院の70%以上を占め、一部の公営医院にも進出している莆田系をどうするかであろう。今回の事件により莆田系医院が百度の検索を広告媒体とすることには歯止めがかかるだろうが、財力がある莆田系の人々がただ手をこまねいているとは思えない。中国政府が徹底的に無資格医を取締り、莆田系を壊滅させない限り、魏則西に続く新たな犠牲者が出る可能性は高い。また、死に至っていなくとも莆田系医院およびその医師によって騙された経験を持つ国民は膨大な数に上るはずである。莆田系の撲滅はひとえに中国政府の決断にかかっている。