この報道を受けて、4月1日付の香港紙「蘋果日報(Apple Daily)」は、ゲーテ老酒商社に関して次のように報じた。

【1】ネット通販の“京東”は、同社のサイト内で百社に上る茅台酒販売会社を取り扱っているが、ゲーテ老酒商社は唯一1本100万元(約1700万円)以上する高額な茅台酒を販売している。公開された資料によれば、ゲーテ老酒商社は“陳年名酒(古い名酒)”のオークションを行う中国最大の企業で、“中央企業(中央政府が監督管理する国有企業)”を後ろ盾としており、全国に400カ所以上のチェーン店を持っている。

【2】茅台酒は“国酒(中国を代表する酒)”と言われ、中華人民共和国成立以来ずっと政府が国賓を招待する宴会には必需の酒であった。金正恩の父親の“金正日”、祖父の“金日成”が来訪した時にも、中国の指導者は茅台酒を振る舞った。この20年来、茅台酒などの名酒は国内価格がどんどん上昇しているが、これは中央企業を後ろ盾とする企業が投機を行っていることと無関係ではない。国内のネットユーザーは、当局による官と民との結託であると非難しているが、彼らはこの種の方式で消費者から暴利をむさぼっている。

 ところで、茅台酒と言えば、1972年2月に米国大統領のリチャード・ニクソンが中国を初めて訪問した時の歓迎宴会でも、同年9月に田中角栄首相が日中国交正常化のために中国を訪問した際の歓迎宴会でも、数ある“国酒”の中から茅台酒が選ばれて乾杯に使われた。日本で茅台酒が知られるようになったのは田中首相の訪中以降である。茅台酒のアルコール度数は53度<注1>と高く、人によっては最初の乾杯だけで酒酔いする程の“列酒(スピリッツ)”である。しかし、茅台酒を含む高級な“白酒(蒸留酒)”の価格が急激に上昇したために、経済的な要因で高級な“白酒”が国賓宴会に供されることは少なくなった。

<注1>現在では茅台酒はアルコール度数が38度と43度の製品も製造されている。これはアルコール度数の低い“白酒”を要求する中国社会の要求に応えたもので、他の“白酒”メーカー各社も同様である。当然ながら、価格はアルコール度数に比例し、53度が最も高く、これに43度が続き、38度は最も安い。

公務接待では高級酒が激減

 これに追い打ちをかけたのが、上述した八項規定で要求されている「接待の簡素化」と「倹約節約の励行」に基づき、“三公経費(海外旅費、自動車購入・運行費、公務接待費)”が削減されたことで、公務接待で高級な“白酒”を飲む機会が大幅に減少したのである。こうした状況を見た庶民は、“官員不敢喝百姓喝不起(役人は“白酒”を飲む勇気がなく、庶民は“白酒”は値段が高くて飲めない)“と揶揄した。茅台酒は“白酒”の中でも高級だが、その茅台酒の最高級品である“飛天(空中を舞う天人)”印のアルコール度53度、内容量540ml(以下「飛天53度」)は、2013年4月以前の市場価格が2000元(約3万4000円)以上であったが、三公経費の削減が強化された同年8月には800~900元(約1万3600円~1万5300円)まで低下したのだった。

 それ以降2016年末までは800~900元で低迷していた飛天53度の市場価格は、2017年に急上昇し、2018年1月には2000元以上に上昇した<注2>。これは企業や富裕層が茅台酒を投機の対象にするようになり、箱買いして⾼値で転売することが流行したことに起因する。茅台酒は寝かせておけば品質が良くなるだけでなく、品質の変化が他の“白酒”よりも早く、古くなればなるほど値が上がるから、利益を増やすなら、急いで転売せずに貯蔵しておけばよい。ちなみに、2018年1月時点における飛天53度の市場価格は、2010年製:3100元(約5万2700円)、2002年製:5300元(約9万100円)、1990年製:1万5800元(約26万8600円)、1981年製:2万4800元(約42万1600円)となっている。

<注2>2018年1月時点におけるメーカー指定の販売価格は1499元(約2万5500円)であった。

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