その価格は128万元(約2176万円)であり、商品説明には以下の記載があった。

 【酒齢】38年以上
 【商品名称】貴州茅台酒
 【度数】高度
 【産地】貴州省
 【醸造所】地方国営茅台酒廠
 【内容量】540ml
 【原料】水、高粱、小麦
 【貯蔵条件】直射日光を避けて冷暗所で密封保存
 

 このネットユーザーはこの事実をネット上に書き込んだ。すると多数のネットユーザーがこれに呼応し、金正恩を歓迎する宴会に2本で256万元(約4352万円)もする茅台酒を供するとは何事かと苦言を呈すると同時に、これは習近平が自ら制定した“八項規定”を無視したことにならないかと問題を提起した。この問題提起を受けてネットは炎上した。“八項規定”とは、2012年11月に中国共産党中央委員会総書記に就任した習近平が、その直後の12月に“中央政治局”会議の席上提起して制定した中央政治局員の行動指針で、“中央八項規定”と呼ばれるものである。それが敷衍(ふえん)されて全ての共産党員にも適用されることになったことにより、単に“八項規定”と呼ばれることになったのである。ここでいう八項規定の無視とは、当該規定で要求されている「接待の簡素化」と「倹約節約の励行」が該当する。

高額な茅台酒に偽物論まで登場

 ネットの炎上がまだ燻(くすぶ)っていた3月31日、北京紙「北京青年報」は上述したネット通販“京東”のサイト内にあるゲーテ老酒商社が販売する“陳年茅台酒”の商品リストには、1本128万元よりもさらに高価な茅台酒があると報じて、価格が明示された商品写真を掲載した。それは、1本378万元(約6430万円)で1950年代生産の茅台酒であった。この内容量は540mlであるから、1ml当たりの価格は7000元(約12万円)という計算になる。もっとも、ゲーテ老酒商社は北京青年報がこの事実を報じた後に、当該茅台酒の表示上に「北京には在庫なし」という但し書きを加えた。

 この報道を知ったネットユーザーは余りにも高価な茅台酒が存在することに驚くと同時に“假貨(にせもの)”ではないのかと疑問を投げかけた。これに対しゲーテ老酒商社は“酒類流通協会”から鑑定書を発行してもらうことは可能だと反論したが、メディアは中国国内には現状のところ“陳年茅台酒(古い茅台酒)”について法的効力を持つ鑑定書を発行できる組織はないので、たとえ酒類流通協会から鑑定書を発行してもらっても何の意味もないと報じた。一方、茅台酒を生産する“貴州茅台公司”は、同公司は2000年以降に生産した茅台酒の真偽を鑑定することは可能だが、それ以前の製品については鑑定不能と表明した。

 ある茅台酒のコレクターは、「現在、陳年茅台酒には偽物が相当多く、瓶の偽造だけでなく、瓶が本物でも中身の酒が本物とは限らず、古い瓶に新しい酒を入れたものが多い」と述べた。

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