2003年3月に広東省“広州市”で、就職のために故郷の湖北省から広州市に到着したばかりの26歳の青年“孫志剛”が、身分証を持たずに外出して“流浪人(ホームレス)”と間違われて収容所へ送られ、取り調べ中に暴行を受けて死亡した事件(通称:孫志剛事件)が発生した。この事件を通じて、収容所におけるホームレスや物乞いに対する非人道的な扱いが明るみに出たのを契機として、都市のホームレスや物乞いを収容して故郷の農村へ送り返すことを目的とした法律『“城市流浪乞討人員収容遣送辦法(都市ホームレス・物乞い収容弁法)”』が廃止された。
孫志剛事件からすでに14年の月日が経過したが、同じ広東省の“韶関(しょうかん)市”にあるホームレスを一時的に収容する“托養中心(養護センター)”で、今年1月1日から2月18日までのわずか49日間に20人もの収容者が死亡していた事実が明らかになった。3月21日に中国メディアがこの事件を一斉に報じると、中国国民は大きな衝撃を受け、真相究明を求める声が全国から沸き上がった。この事件が発覚する端緒となったのは、自閉症で知的障害を持つ15歳の少年の失踪だった。事件の概要は以下の通り。
きっかけは、15歳少年の失踪
【1】2016年8月8日、朝6時に目覚めた“雷洪建”は、隣のベッドに寝ているはずの息子、“雷文鋒”の姿がないことに気付いた。部屋の扉は施錠されていたから、雷文鋒が部屋を出る時に外から施錠したものと思われたが、熟睡していた雷洪建は雷文鋒がいつ部屋から出て行ったのか知らなかったし、息子が外から扉に施錠する音も聞いていなかった。3年前に息子の雷文鋒を連れて、故郷の湖南省から広東省“深圳市”へ出稼ぎに来た雷洪建は、ある電子製品工場で働くようになり、同工場の従業員宿舎の1室に息子と一緒に住んでいた。
【2】従業員宿舎の1階に設置された監視カメラの映像には、早朝の4時6分に宿舎の門を出て、“観瀾大富工業区”のゲートの方向へ歩いて行く雷文鋒の姿が映っていた。雷文鋒はえんじ色の半袖シャツを着て、黒色の半ズボンをはいていた。雷文鋒は自閉症で知的障害があり、すでに15歳であるにもかかわらず、簡単な足し算・引き算すらもできない。彼が記憶しているのは自分と母親の名前だけで、電話番号も記憶できないし、“普通話(標準語)”も話せず、表現できる単語は限られていた。彼ら父子は宿舎の1室に同居しているが、雷文鋒が1人で外出することはなく、週末に雷洪建と一緒に遊びに行くとしても、それは深圳市内に限られていた。
【3】雷文鋒はどこへ行ったのか。雷洪建は工業区のゲート周辺を探し回ったが、すでに数時間が経過していたし、早朝4時では目撃者もおらず、雷文鋒の行方を捜す手掛りは全く見付からなかった。雷洪建は専門業者に依頼して雷文鋒の顔写真入りの“尋人啓事(尋ね人広告)”を超特急で作成し、工業区内や周辺地域の柱や壁に貼って回った。当該尋ね人広告の内容は以下の通り。
雷文鋒、男、15歳。知的障害あり、自閉症、発音不明瞭、“普通話(標準語)”話せず。
2016年8月8日、深圳市内“観瀾大富工業区”で失踪。上半身はえんじ色の半袖シャツを着て、下半身に黒色の半ズボンをはいていた。身分証明書もカネも持たず、家族は非常に気をもみ、ずっと探しているが何の手掛りもない。どうか、心ある人はこの広告を心に留め、情報がありましたら電話18926045291へ連絡ください。
感謝、“好人(善人)”が一生平安であることを祈ります。
Powered by リゾーム?