行く末は「オセアニア」か

 この趙明波の評論は明らかに上述した人民日報の評論『満票当選はさらに危険』を拠り所として書かれたものと思われるが、『満票当選はさらに危険』がネット上から削除されていることから考えると、趙明波の文章も削除される可能性が高い。あるいは、すでに削除されているのかもしれない。

 習近平が中国共産党中央委員会総書記に就任したのは、2012年11月15日に開催された中国共産党第18期中央委員会第1回全体会議であった。上記の人民日報の評論は2011年3月17日付であり、北京日報の評論は2012年3月31日付である。これは“胡錦濤”総書記の2期目の4年目と5年目に当たるが、その時期に満票当選を危惧する評論が人民日報と北京日報に掲載されたということは、中国国民の中に充満していた満票当選に対する不満や疑問を沈静化させようとする意図があったものと考えられ、一方の中国国民はこうした評論の中に民主選挙への一縷の望みを見出していたのかもしれない。

 しかし、国家主席の任期を2期10年までとする制限を撤廃して、総書記、国家主席、中央軍事委員会主席という3冠の2期目に入り、3期目以降も3冠を継続保持することが可能となった習近平にとっては、満票当選だけが肝要なものとなり、いかなる反対票の存在も許せないものとなったのである。今後、習近平政権による言論統制はさらに強化されて、異論が許されない社会が到来する可能性がある。そうなると中国は、ジョージ・オーウェルがその著作『一九八四年』で描いたような一党独裁で、個人の思考まで徹底的に管理された超大国「オセアニア」に類似した国家に変質することが懸念されるのである。