「文化大革命」に賛成し、「文化大革命反対」にも賛成したことになる(写真:AP/アフロ)
「文化大革命」に賛成し、「文化大革命反対」にも賛成したことになる(写真:AP/アフロ)

 中華人民共和国憲法の第57条には、「“全国人民代表大会”(以下「全人代」)は、最高国家権力機関である」と規定されている。また、第85条には、「“国務院”、すなわち“中央人民政府”は、最高国家権力機関の執行機関であり、最高国家行政機関である」と規定されている。これを日本に当てはめれば、全人代は国会に、国務院は内閣に、それぞれ相当する。

 但し、日本が国家権力を立法(国会)、行政(内閣)、司法(最高裁)の3権に分け、相互に抑制し合って均衡を取る「三権分立」制度を採用しているのに対して、“議行合一”制度を採用している中国は、行政機関(国務院)と司法機関(“最高人民法院”)が立法権を持つ全人代に従属しており、全人代の法的地位は国務院と最高人民法院より高い。

 3月5日に開幕した第13期全人代第1回会議は、16日間の会期で3月20日に閉幕する予定である。全人代を構成するのは選挙を経て選出された、日本の国会議員に相当する“全国人民代表大会代表”(以下「全人大代表」)であり、第13期全人大代表は2980人となっている。全人大代表の任期は5年であり、第13期全人大代表の任期は2018年3月から2023年3月までの5年間である。

 中国で最初の全人代、すなわち第1期全人代(1954~1959年)の全人大代表は1226人であったが、その構成は、中国共産党員:668人(54.5%)、民主党派及び無党派人士:558人(45.5%)であった。中国共産党員の比率はその後、期を経る毎に増大を続け、現在開催中の第13期全人代の構成は、中国共産党員:2119人(71.1%)、民主党派及び無党派人士:861人(28.9%)となっている。<注1>

<注1>中国は中国共産党による一党独裁体制だが、中国共産党に協力する政党としての位置付けで8つの民主党派が存在を許されている。
 

 一級行政区(省・自治区・直轄市)が選出する全人大代表は、各省・自治区・直轄市の人民代表大会で間接選挙により選出されることになっている。また、これ以外に特別行政区である香港、澳門(マカオ)の中国国民、台湾省出身の中国在住者、“中国人民解放軍”の将兵からもそれぞれ全人大代表が選出される。

2人のスタッフに支えられながら…

 さて、第12期全人代(2013~2018年)の全人大代表は2987人であったが、最年少は1992年12月生まれで、当時19歳の“陳若琳(しんじゃくりん)”であった。陳若琳は水泳の飛び込み競技の選手で、2007年に14歳で参加した世界選手権メルボルン大会の女子シンクロ高飛び込みで金メダル、10メートル高飛込みで銀メダルを獲得して世界に名を馳せ、2008年の北京オリンピックでは2つの金メダル(女子高飛び込みおよびシンクロ高飛び込み)を獲得した人物である。この事実から判断すると、全人大代表に年齢制限はないものと思われる。一方、この時、最年長の全人大代表は、当時83歳であった女性の“申紀蘭(しんきらん)”であった。

 それから5年後の2018年3月5日に開幕した第13期全人代(2018~2023年)の全人大代表2980人の中で最年少が何歳なのかを示す資料は現在のところ見当たらないが、最年長が誰かは分かっている。それは、今年89歳となった申紀蘭なのである。彼女は89歳という高齢にもかかわらず、またしても第13期全人代の全人大代表に選出されたのである。

 中国メディアは、「今年、申紀蘭は2人のスタッフに支えられながら、全人代に参加するために会場のある北京市へ到着した」と報じた。それでは、申紀蘭とはどのような人物なのか。

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