「一挙に」でも「地道に」でも

 コネが重要な社会では、そのコネの拠り所となる権力者は絶対的存在である。第1項にある“李剛”は、河北省“保定市”の“市公安局北市区分局”の副局長であり、保定市公安局全体から見れば多数ある分局の1つである北市区分局の副局長に過ぎない。副局長は複数いるのが常だから、その地位は本局の公安局では“副科長(副課長あるいは係長)”程度かもしれない。しかし、李剛が管轄していた地域におけるその権力は、地場の暴力団の組長に相当する程のものがあり、李剛が顔を出せば何事も彼の意のままになったのである。だからこそ、酒酔い運転で死傷事故を起こした李剛のドラ息子は、李剛の名前を出しさえすれば、人は李剛を恐れて彼に手を出さないと考えたのだ。

 地方の公安分局の副局長でさえも、それほどの権力を持つのだから、中国共産党中央や中国政府の指導幹部が持つ権力は巨大であり、その傘下の組織や機関の指導幹部が持つ権力も非常に大きい。そうした地位につくためには、有力者とのコネを探し、有力者に金品を贈り、媚びへつらって良好な関係を築いて出世を続け、最終的に指導幹部にのし上がる。そうなれば、今までは贈り物を送る立場だったものが、贈り物を受け取る立場に変わり、職権濫用、公金横領、収賄などにより資産は膨れ上がり、妻以外に“小三(愛人)”を囲い、“貪図享楽(享楽をむさぼる)”生活を送れるようになる。しかし、そうした我が世の春がいつまで続くかは分からない。運が良ければ、我が世の春は長く続くだろうが、運が悪ければ、不満分子に告発されて、刑務所での生活を余儀なくされることになる。

 総じて中国人はポジティブ思考であり、出世して金持ちになり、楽しく人生を送りたいと考えている。そのために、手っ取り早く金持ちになりたい人は、株や不動産に投資し、宝くじを買い、ギャンブルにカネを投入し、一攫千金を狙う。女性なら金持ちに嫁ぐことで一挙に金持ちの仲間入りを果たそうとする。一方、地道に出世して金持ちになりたい人は、役人となり、上司に贈り物を送ることで一歩一歩出世して、贈り物を受け取る側に立とうとする。中国人にとって、建前はあくまで形式に過ぎず、彼らが優先するのは本音なのである。

 上述した記事は、中国人の作者が冷静な目で見た「当世中国人の矛盾行為」を列記したものであり、的確に中国人の本質を捉えていると、筆者には思える。中国社会および中国人の動向を観察する上では、当該記事は極めて有益な内容を含んでいるので、参考としていただければ幸甚です。