2015年11月27日、北京市の最高級宿泊施設である“釣魚台国賓館”で、“中国新聞社”および“中国新聞週刊”が主催した「第11会中国・企業の社会的責任国際フォーラムおよび2015年中国の社会的責任栄誉式典」が開催された。フォーラムは“再見初心(初心に帰る)”をテーマに政府、企業、学術界など数百人の代表が集い、企業の社会的責任について討議を行った。これに続いて行われた栄誉式典では、20社の企業が「2015年社会的責任企業賞」を授与され、その中で最も社会的責任を果たした企業として“鈺誠集団”が「2015年最も社会的責任感を備えた企業賞」を授与された。

 授与式が終了した後、鈺誠集団の“主席執行官(最高経営責任者=CEO)”である“彭力”が受賞企業20社を代表して挨拶を行い、「人を助ければ己に還ってくる。時代、社会と共に進歩することは、社会的責任を果たす鈺誠マンの一貫した約束事です。本日の受賞は我が鈺誠にとって新たな出発点であり、さらに強い力で我々を一段と発展させ、より多くの社会的責任を果たすという決意をより一層強くさせることでしょう」と述べた。

「社会的責任企業賞」の裏側で

 さて、鈺誠集団(正式名称:“安徽鈺誠控股集団”)は、2014年2月に“金易融(北京)網絡科技有限公司”(以下「金易融」)を買収し、同社が運営していた“網絡平台(ネットプラットフォーム)”を改造した。同年7月、鈺誠集団はその改造したネットプラットフォームを“e租宝”と命名し、「ネット金融」という看板を掲げてインターネット上の金融業務を開始した。e租宝の開業から1年半、そして、上述した栄誉式典から9日後の2015年12月5日、“公安機関”は鈺誠集団の流動資金が不足し、資金繰りが行き詰まる危機に直面していることを発見した。また、内偵により鈺誠集団はすでに資金移転や証拠隠滅を開始しているし、数人の経営幹部が行方をくらましていることも判明した。

 このまま放置すれば、ネット金融“e租宝”の投資者がさらなる損失をこうむることは避けられない。投資者保護の決断を下した中国政府“公安部”は、12月8日に全国各地の公安機関による一斉摘発を行い、e租宝の実質的責任者で、鈺誠集団の“董事会執行局(取締会執行局)”主席の“丁寧”を含む主要な経営幹部を詐欺容疑で逮捕した。これに対して、自分たちの会社は健全だと信じるe租宝の職員たちは、翌9日の9時30分に北京の本社前に集まり、「私たちは出勤しています、いつでも来社を歓迎いたします」と書かれた横断幕を掲げて気勢を上げ、その写真をネット上に流して同社の危機を否定した。

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