さて、2017年の“春節(旧正月)”2日目に当たる1月29日、寧波動物園で人がトラにかみ殺される事件が発生した。それは高額な入園料を節約することに起因したものだった。事件当日、寧波動物園は春節休暇を楽しむ家族連れでにぎわっていたので、突然発生した凄惨な事件を多数の人々が目撃し、楽しいはずの休日は悲しいものに変わったのだった。

抜け道から無賃入園

 この日の午後2時頃、湖北省から寧波市へ出稼ぎに来ている“張某”は妻と2人の子供に友人の“李某某”夫婦を加えた一行6人で寧波動物園の北門に到着した。張某の妻と2人の子供および李某某の妻の4人は、入園料の400元(大人130元×2人+子供70元×2人)を支払って入園券購入後に北門から入園した。ところが、張某と李某某の2人は入園料の230元(大人130元×2人)を節約するために入園券を購入せず、家族が北門から入園したのを見届けると北門の西側にある寧波動物園の外塀に向かった。寧波動物園の北門西側から600m程離れた場所に地元の人が知る無賃入園するための抜け道があった。2人は抜け道を通って外壁に到り、高さ2m以上ある外塀を乗り越えて園内に侵入すると、そこに置かれていた侵入禁止の警告標識を無視して前進し、錆びて穴の開いた鉄条網をくぐり抜けてさらに進んだ。

 鉄条網をくぐり抜けた2人の前には野菜畑があり、その先に高さ3mの塀がそびえていた。塀には「内に猛獣あり、乗り越え禁止」の警告標識が張られていた。塀はコンクリート製で上部には高さ70cmの格子状の鉄柵がネズミ返しのように内側に傾斜した形で設置されていた。張某は警告標識など眼中にないかの如く無視して塀に飛びつくと、一気に頂上までよじ登り、塀の向こう側へ飛び降りた。一方、李某某はここまできて怖気付き塀の下にうずくまった。

 高さ3mの塀から飛び降りた張某が見たのは、防護服を着てトラに餌をやる飼育員の姿だった。張某はそこで初めてその場所が“東北虎(アムールトラ、またはシベリアトラ)”を放し飼いにしている「トラ区」であることに気付いたが、飼育員がトラに餌を与えていることで安心したのか、慌てることなく観客のいる方向へ向かおうとした。黒い服を着た男が突然現れたことに驚いた飼育員は張某に早く安全地帯へ逃げるよう叫ぶと同時に、トラに肉の塊を与えて気を引こうとした。