さて、動画は若い女性がダフ屋を怒鳴りつけている場面だけなので、動画を見たネットユーザーは当初は意味が分からず戸惑ったようだが、繰り返し見るうちに彼女の言わんとすることが理解できたようである。再生回数が1000万回にも達したことで、動画は社会の注目を集めた。1月26日、国営“中央電視台(中央テレビ)”は、著名なニュースキャスターである“白岩松”が司会をする報道番組『新聞1+1』で、「ダフ屋を痛罵した若い女性は誰を痛めつけたのか」と題して当該動画の問題を取り上げたのを筆頭に、中国メディアは一斉に特集を組んで事件を報じた。

脅され、警備室に連行され、脅迫電話を受け

 中国メディアが報じた内容を取りまとめると次のようになる。

(1)事件の目撃者によれば、若い女性が広安門医院の診察受付待ちの行列に並んだのは1月18日の夜で、受付窓口が閉まった後の7時過ぎであったという。女性が並んだのは、“専家(専門医)”の予約を受け付ける窓口の前に並ぶ行列で、女性は2番目で、その先頭には年長の婦人がいた。それから2時間が経過した9時過ぎに、突然1人のダフ屋が少しもためらうことなく行列の先頭に割り込んだ。これを見た女性はダフ屋に対し、「こちらの婦人が先に来ていたのに、あなたはどうして割り込むの」と文句を言った。すると、ダフ屋は「俺がお前を叩き出してやろうか」と応じたので、彼女が携帯電話を取り出してダフ屋の写真を撮ろうとしたところ、携帯電話をダフ屋に取り上げられ、地面に叩きつけられて壊された。周囲の何人かが女性のために抗議しようとしたが、逆にダフ屋に「ぶちのめすぞ」と脅されて押し黙るしかなかった。

(2)翌19日早朝、受付窓口が開くと同時に行列は前進し、3番目にいた女性は間もなく窓口に進んで消化器内科の専門家である“周医生(周医師)”の診察受付を要求したが、窓口の係員はそっけなく「予約番号はもうない」と応え、取りつく島もなかった。予約番号を取ることができなかった女性は、がっかりして窓口を離れたが、その直後に後方に並んでいた人が周医師の予約番号を取得したことを知った。これに怒った女性は“挂号室(診察予約室)”の門を開けようとしたが、警備員に発見されて阻止された。その後に女性は警察へ通報したのだが、警官の到着を待つ間に診察予約室を指さしながらダフ屋の集団に文句を言ったのが、動画の内容であった。

(3)警官が到着した後、女性と周囲にいた数人は“保衛科室(警備室)”に連れていかれた。警察は医院側と女性との間で協議して和解するよう提案したので、女性は周医師の予約番号を要求したが、医院側は物理的に無理と回答して、別の専門医の予約番号を与えた。最終的に、彼女は別の専門医の診察を受けて、母親の薬を受け取り、19日午後6時過ぎの列車で実家へ帰って行った。

(4)ところが、奇妙なことに、実家へ帰り着いた後に、彼女はダフ屋から脅しの電話を受けたのだった。彼女の電話番号は医院の診察カードに記載したのと警察へ通報した際に連絡しただけで、ダフ屋が知るはずがない。それなら、ダフ屋はどこから電話番号を入手したというのか。それは広安門医院の警備員を含む職員以外には考えられない。

(5)同じ目撃者によれば、目撃者自身は頻繁に広安門医院へ通っているが、ダフ屋は常にのさばり、顔なじみになっているほどだという。また、度々執務中の“便衣警察(私服警官)”を見かけているが、何か問題が発生した時に来るのは私服警官ではなく、制服を着た別の警官だという。さらに、彼女がいつも早朝4時頃に予約受付の行列に並ぶと、必ずダフ屋が「今日の専門家の予約番号はいらないか」と聞きに来るが、あの女性の事件が発生した後は、ダフ屋が姿を消しただけでなく、事件発生当時に予約受付の窓口にいた係員も警備員も誰一人として姿を現していないという。

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