中国の統計をつかさどる国家統計局の最高責任者が、地方政府による統計データねつ造の存在を公式に認めたのは前代未聞のことであり、「一部の地方」と言葉を濁しているが、実際は統計データのねつ造が全国的に蔓延している可能性を伺わせたのだった。

 上述した遼寧省長の陳求発による遼寧省内の一部の県や区で過去に数字の水増しによる統計データのねつ造が行われていたとの発言は、1か月前に統計データのねつ造が存在することに言及した国家統計局長の寄稿文に誘発されたものと言えるのかもしれない。

監視下ではマイナス成長に

 2016年第1四半期(1~3月)のGDPは、遼寧省が全国31省・自治区・直轄市の中で唯一マイナス成長となり、GDP成長率はマイナス1.3%となった。なお、遼寧省の2015年通年のGDP成長率は3.0%であったが、これも全国31省・自治区・直轄市の中で最低の成長率であった。実は、2014年に“中央巡視組(中央巡視チーム)”<注4>が遼寧省を巡視した際に、すでに遼寧省の経済データに虚偽があることを確認していた。遼寧省に対する中央巡視チームによる再検査は2年後の2016年2月27日から4月28日までの2か月間行われたが、経済データに水増しのねつ造が存在することを改めて確認する結果となり、過去2年間に遼寧省が水増し分を絞り出してねつ造問題の徹底的な解決を図った形跡が全くないことが判明した。

<注4>中国共産党の“中央紀律検査委員会(党の監督機関)”と“中央委員会組織部(人事の担当機関)”が連合して設立した中央政府や地方政府による党紀違反や法律違反を査察する組織。

 上述した2016年第1四半期のGDPは同年5月26日までに遼寧省と黒龍江省を除く29の一級行政区が数字を公表していたが、当該第1四半期に中央巡視チームの検査を受けていた遼寧省と黒龍江省はGDP数字の発表時期を大きく後ろにずらさざるを得なかった。遼寧省は中央巡視チームが検査する中では、経済データをねつ造することができず、最終的には実際に近い数字を出したため、GDPはマイナス成長に転落したのだった。ちなみに、遼寧省のGDP成長率は、2016年上半期がマイナス1.0%、第3四半期がマイナス2.2%であった。2017年1月24日時点では2016年通年の各一級行政区のGDPは公表されておらず、遼寧省のGDP成長率がどうなったかは分からないが、恐らくマイナス成長からの脱却は不可能だろう。

 遼寧省では2015年に財政収入が二桁の落ち込みを示した。遼寧省長の陳求発は、2016年1月に行った「省政府工作報告」でその原因に言及した後、「我々は面子上みっともないという圧力を受けつつ、真剣に水増し分の除去に努め、2015年の財政データを確固たるものとし、2016年以降はその他の経済データも確かなものとするよう努力する」と述べていた。

 しかし、遼寧省は水増し分の除去努力を怠ったばかりか、旧態依然の“官出数字, 数字出官”の発想から脱却できなかったために、全国最下位のGDP成長率、しかもマイナスの成長率で呻吟(しんぎん)している。中国経済が下降線をたどる中、遼寧省に危機が迫っている。