両親は失踪、戸籍もなく

 【1】1月12日の午前11時、青島市の気温は氷点下8℃。記者は厚いダウンのコートを着ていても寒く感じるのに、薄い外套しか着ていない少年が1人で黙々と宅配荷物を団地内の住宅へ配達している。少年の名前は“長江”、今年6歳の子供なので“小長江”と呼ばれている。小長江は彼が“大爺(おじさん)”と呼ぶ“顔世芳”と一緒に暮らしているが。今の小長江にとっては、顔世芳だけが身近にいる唯一の“親人(身内のように親しい人)”なのである。

 【2】顔世芳は小長江の父親ではない。顔世芳と小長江の父親である“李連龍”は“工友(仕事仲間)”で、2009年に彼ら2人が山東省棗荘市にあるブライダル業界で働いていた時に知り合った。当時、彼らは結婚式の会場で主に演奏や奇術、歌を歌ったりするのが仕事で、収入は不安定だった。李連龍とその妻は共に孤児で、それぞれ小さい時から赤の他人に育てられた。顔世芳と知り合って以降、李連龍とその妻はずっと顔世芳の家に住み、李連龍は仕事があるとあちこちを転々としていた。

 【3】その後、李連龍夫妻には江西省の“蓱郷市”で子供が生まれた。それが小長江だが、李連龍には戸籍がなかったので、顔世芳も小長江の正確な年齢を知らない。結婚後、李連龍は長らく身体を悪くしていたが、好きな酒を止められなかった。その妻は日に日に体調の悪化を来す李連龍をずっと世話していた。しかし、2013年冬のある日、李連龍の妻が抱いていた小長江を顔世芳に手渡し、「貴方がこの子の面倒を見てくれれば、私は安心だわ」と言ったので、顔世芳はてっきり冗談を言っているのだと思っていたが、数日後に彼女は小長江を残して失踪して連絡が取れなくなった。

 【4】それから3か月後、李連龍は失踪した妻を探しに行くと言い出し、何度止めても聞かずに、小長江を顔世芳に預けて出て行ってしまった。最初の1カ月が過ぎた頃に、李連龍から電話がかかって来たが、その後は連絡が途絶えた。当時、李連龍の病状は相当に悪かったので、誰にも世話してもらえずに、どこかで死んだ可能性が高い。こうした訳で、小長江は法的な婚姻関係にない男女間に生まれた“非婚生子(私生児)”であり、なおかつ父親の李連龍も戸籍を持たなかったため、6歳になった現在まで戸籍登録ができず、小学校にも通えず、顔世芳に頼って活きるしかないのが実情である。

 【5】その後も顔世芳は棗荘市にある結婚式場を転々として働いていたが、過去2年間は仕事がうまく行かず生活が苦しかった。遂には妻と離婚して子供が1人残され、顔世芳は自分の子供だけでなく、小長江の面倒も見ながら棗荘市で暮らすことを余儀なくされた。2017年7月、友人の紹介で、顔世芳は青島市“徐州北路6号”にある宅配業者の“申通快逓点”で責任者の職を得た。こうして、棗荘市を離れた顔世芳は、2人の子供を連れて青島市へ移り住んだ。宅配便の仕事は毎月約3000件の荷物を配達して、平均4000元(約6万8000円)の収入になる。

 【6】戸籍を持つ顔世芳の子供は小学校に通えているが、無戸籍の小長江は小学校に通えない。小長江を家に残そうにも、世話をしてくれる人がいない。仕方なく、顔世芳は宅配荷物の配達をする時に小長江を帯同し、忙しい時には配達を手伝ってもらうようになった。それがいつの間にか常態化し、今では小長江が戦力となって配達を手伝ってくれている。この間、顔世芳もただ手をこまねいていたわけではなく、小長江を小学校に通わせようと手づるを探したが、今に至るも何も見つからずにいる。