王青偉は“中国国際象棋協会”に属する“青島国際象棋協会(青島チェス協会)”の会長である。従い、彼の自宅にあったチェス盤と駒に少年の目が留まり、少年が「これは何」と尋ねたのは極めて自然の流れだった。王青偉はわずか6歳の少年が宅配便の配達員をやっていることに違和感を覚えると同時に同情を禁じえず、思わずチェスセットを贈呈し、チェスを教えることを申し出たのだった。少年が去った後、王青偉は少年に対する同情を友人たちと共有しようと、中国最大のSNSである“微信(WeChat)”のグループ情報サービス“微信群”に上述の内容を簡潔にまとめた文章を“快逓男孩(宅配少年)”という題名を付けて投稿した。

小長江のために

 この投稿は人々の注目を集め、「わずか6歳で宅配便の配達員、考えただけでも心が痛む」、「感動した」、「貧乏人の子供は早く独り立ちするのには理由がある」、「昔、農村の学校で教員をした時に、農村の子供は物事の理解が都市の子供より早いと感じた」、「こんなに小さいというのに働くなんて本当に切ない」などのコメントが多数書き込まれた。一方、王青偉がチェスを教えている生徒の親からは「その子が団地内で宅配荷物を運んでいるのを何度も見ているし、私の同僚がその子の“大爺(おじさん)”を知っている」との連絡があった。連絡を受けた王青偉は、あの子はどうしておじさんと一緒なのかと疑問を覚え、あの子に何かしてやれるのではと考えて、生徒の親に少年の叔父さんへの連絡方法を探してくれるよう依頼した。

 すると、翌10日の朝に生徒の親から“微信”で、「あの少年の名前は“長江”と言うのだそうです。彼のおじさんの電話は○○○です」という連絡が入った。王青偉は早速に長江のおじさん宛てに“微信”のチャットで呼びかけたところ、間もなく「私が宅配少年のおじです。時間があればお会いしたい」という返事が来た。そこで、王青偉が「長江君に何か困ったことがあるのなら、助けたいと思っています。ところで、彼の父親は青島市にいますか」と問いかけると、おじさんからは「あの子の父親はすでにこの世にいません」と回答があった。王青偉が「そうなんですか。それなら貴方から簡単に事情をお話しいただけませんか」と打診すると、おじさんからは「時間を調整しますのでお待ちください」と返事があった。

 王青偉が長江少年のおじさんを探し出すまでの経緯を書いた文章を彼自身が持つ“微信”の公式アカウントで発表すると、当該文章は“微信”の各種機能を通じて拡散され、「6歳の宅配少年」の存在は瞬く間に世間に知れ渡り、青島の各メディアが注目するところとなったのである。1月12日の夜、地元の“青島電視台(青島テレビ)”は、長江少年を特集した「6歳の少年が寒冬に宅配荷物の配達」と題するドキュメンタリー番組を放映した。そこで報じられた内容の概要は以下の通り。