中国官営メディア「人民日報」海外版に属する“微信(ウィーチャット)”の「“侠客島”」は、1月17日付の「ネットユーザーが周子瑜を討伐するのは、ポピュリズムの狂喜」と題する文章を発信した。同文章は中国で初めて中国メディアが台湾芸人の周子瑜事件に絡み彼女の活動を禁止する措置を取ったことを認めたのである。すなわち、歌手の黄安が周子瑜を台湾独立支持者だと告発したのを受けて、中国メディアは一斉に反応した。周子瑜が出演した北京衛星テレビと安徽衛星テレビの番組は周子瑜の名前を削除したし、“華為(ファーウェイ)”ブランドの携帯電話を販売する韓国の代理店は、周子瑜とのCM契約を解除したのだった。また、同文章は同時に、周子瑜事件が発酵して大きなものとなった結果、多くの“神転折(奇跡的な転換)”が生じ、誇張なしで、民進党に50万票の増大をもたらしたと述べたのである。

「50万票」の意味

 1月17日付で“米国之音(Voice of America中国語)”が報じたところによれば、ニューヨーク台湾商業会議所の会長“李金標”は、台湾のダブル選挙で民進党が圧勝したことについてインタビューを受けて、周子瑜事件は民進党に50~100万票をもたらしたと述べた。李金標は、「中華民国の国旗を持てば、誰でも台湾独立支持者になるのか。周子瑜に対する謝罪の強要が、ネットを通じた投票の呼びかけを生み、台湾の若者たちの大量動員につながった。その根底にあるのは、反感である」と述べた。

 一方、1月17日付の中国メディアは、周子瑜事件はいずれかの政治勢力の挑発によるものであると論じ、周子瑜は「罪のない少女」であると報じた。また、国営テレビ“中央電視台(中央テレビ)”は周子瑜を含むTwiceの出演番組を放映した。Twiceの中国での活動が早々に解禁となったのは、JYPの戦略が功を奏したと言えるのだろうが、JYPが周子瑜の心に残した傷は深い。

 上述した周子瑜事件がダブル選挙において民進党の圧倒的勝利に大きく貢献したことは間違いのない事実であろう。但し、周子瑜事件が民進党にもたらしたという50~100万票を差し引いたとしても、民進党の得票数は国民党の得票数を大きく上回っていた。それほどに、台湾の有権者は過去4年間の馬英久総統および国民党による執政に大きな不満を感じていたのだ。周子瑜事件からも分かるように、次期総統となった蔡英文女史にとって対中関係の舵取りは極めて困難なものとなることが予想されるが、民主選挙で民意により圧倒的勝利を収めたことが、蔡英文総統にとって大きな心の支えとなることは間違いない。