かつての中国で筆記用具といえば“鋼筆(万年筆)”が主流で、国産ブランドの“英雄(Hero)”は多くの人々に愛用されていた。しかし、時代が進むにつれて、“圓珠筆(ボールペン)”の便利さが知られて普及するようになり、いつの間にかボールペンが万年筆に取って代わった。確か1995年頃までだったと思うが、商談で中国へ出張する時には廉価な日本製ボールペンを持参して中国の顧客へ手土産として贈ると、非常に喜ばれたものだった。しかし、1996年以降はボールペンが中国国内で普及したため、ボールペンは手土産には不適切なものとなり、安価なボールペンを贈ると、「馬鹿にしているのか」と反感を買う代物になり果てた。

最先端を走っているはずが…

 それにしても、中国は2003年10月に宇宙飛行士の“楊利偉”を搭乗させた宇宙船「神舟5号」で有人宇宙飛行を成功させたのを皮切りに、2016年10月に打ち上げた「神舟11号」までに6回も有人宇宙船の打ち上げに成功し、宇宙滞在経験を持つ宇宙飛行士は延べ14人に達している。また、2016年6月にドイツのフランクフルトで開催された「スーパーコンピューティングに関する国際会議(ISC)」で発表されたスーパーコンピュータの処理能力ランキング「TOP500」で第1位に輝いたのは、100%中国製の「“神威・太湖之光”」であり、その計算速度は1秒間に9京3000兆回であった。このように今や科学技術分野で最先端を走っている中国が、李克強が言うように、ボールペンのチップに組み込まれるボールすらも国産できず、輸入に頼っていたとは驚き以外の何物でもない。

 香港誌「動向」が伝えたところによれば、2015年3月に李克強が中国の機械設備輸出に関わる書類に目を通していた時に、港湾のガントリークレーン、クレーンのワイヤロープ、自動車エンジンの主軸、飛行機の胴体フレーム用アルミ合金などの非常に多くの製品が依然として輸入を必要としていることを知って驚愕した。この時、李克強は書類の該当部分に3本の赤線を引き、5分ほどの間その部分を呆然と見詰めていたという。これが上述した座談会における李克強のボールペンの「ボール」発言につながったものと思われる。

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