“国家級貧困県”にはびこる不正

 ところで、王福満が暮らす昭通市の魯甸県は、全国に564カ所ある“国家級貧困県”の1つである。“国家級貧困県”は“国家扶貧工作重点県”とも言い、「国家が資金を供与して貧困人口の救済と自立支援を行う重点県」を意味する。魯甸県は2014年8月3日にマグニチュード6.5の地震により大きな被害を受け、死者617人を出した。当時の統計によれば、魯甸県の人口は41万人で、その中の15万人以上が貧困人口であったが、地震の被害により貧困人口は増大したものと思われる。当然ながら、王福満の家族はこの貧困人口の中に含まれる。

 中国政府が国家級貧困県に提供する資金を“扶貧資金”と言うが、この扶貧資金にも不正が確認されている。“国家審計署(日本の会計監査院に相当)”が発表した2018年の第1号公告には、監査結果で問題が発見された34件の状況報告が記載されているが、その中に2012年から2015年の間に雲南省の“硯山県”、“麻栗坡県”など11県の“扶貧辦公室(事務所)”が680万元(約1億1600万円)の扶貧資金を騙し取っていたことが判明し、29人の責任者が処罰されるとあった。

 しかし、これは氷山の一角に過ぎない。1月9日付の中国メディアは次のように報じた。すなわち、国家審計署が2016年と2017年の2年間に374カ所の国家級貧困県を抽出して監査を行い、1万8200戸の貧困家庭を訪問して調査を行った結果、これら貧困県に供与された総額738億元(約1兆3310億円)の扶貧資金の中、70億元(約1190億円)以上の資金に問題のあることが判明し、各地に命じて回収などの方式で改善を促している。昨年10月末までに32億元(約544億円)を改善し、970人が責任を追及されている。

 国家級貧困県の改善を支援するための扶貧資金が、資金の受け入れ窓口として実務を行う扶貧事務所の人々によって騙し取られていては、貧困人口が削減できるはずがない。本来なら中国メディアは霧氷少年を報じると同時に、留守児童と貧困人口に関する問題を論じるべきだが、国営通信社の「新華社通信」が1月12日付で配信した記事の表題は、『中国の霧氷少年を見て、外国人はついに中国がどうして強大かを知った』であった。これを見て、筆者はあっけにとられ、中国がどうして脆弱なのかを知ったのだった。