プロジェクトでベネフィットをどう出すか

経営者の関心はプロジェクトがもたらす価値にあり、進捗やコストの管理は現場の仕事だと考える。だからプロジェクトマネジメントにさほど関心を持たないのではないか。

 組織がプロジェクトを実施するのは目的を達成するためである。目的のことを我々はベネフィット(Benefits)と呼んでいる。PMIはベネフィットリアライゼーションマネジメント(Benefit Realization Management)というテーマを研究している。

 ベネフィットを得ている組織とそうではない組織を比較すると、アプローチの仕方が違うことがわかっている。ベネフィットを得ている組織は次の3つのステップをプロジェクトの中で実行している。

 まず、プロジェクトの最初の段階で、目的、すなわちベネフィットを明確にしている。ベネフィットは顧客満足、投資対効果、新規顧客獲得、従業員満足など様々な要素を含むが、ベネフィットを得ている組織は顧客や複数のステークホルダーの視点からとらえている。

 同時にステークホルダーに対する責任を明確にし、個人単位で背負わせている。プロジェクトマネジャであることもあるし、ビジネスオーナーである場合もある。

 2つ目のステップとして、プロジェクトのライフサイクルにおいて、目的が達成されつつあるかどうか、常時モニタリングする。3つ目はプロジェクトが終わり、オペレーションに入るときにベネフィットを測定し続ける体制を確立すること。ベネフィットの多くはプロジェクトが終了後、オペレーションが始まってから測定可能になる。

 いくつかの組織は測定のために、プロジェクトを終えた後、ベネフィットをよくわかっているプロジェクトメンバーを組織の現場に送り込み、ベネフィットの測定を支援させている。

 ベネフィットリアライゼーションが苦手な組織は3つ目のステップだけに焦点を当てるが、それでは遅い。ベネフィットの特定をきちんとせず、しかも途中の評価も怠ってきているから、結局最初に戻らなければならなくなり、ベネフィットを得ることに失敗してしまう。

経営者と専門家が同じ言葉で対話する

当たり前の話に聞こえるがそれができていないということか。

 ベネフィットリアライゼーションのコンセプト自体は数十年前からあったが、なかなか実現できない。どうしたら改善できるかを見つけるために、我々は2年半ほど前に調査を実施し、提言をしている。

 すでに述べた通り、ビジネスエグゼクティブと、テクノロジーを担うプロフェッショナルとのコミュニケーションに鍵がある。エグゼクティブはビジネスの価値やベネフィットを重要視するが、プロフェッショナルたちはどうしても専門的なタスクのほうを気にしてしまう。

 これも先ほど触れたが、言葉の問題と言える。エグゼクティブとプロフェッショナルが共通の言葉で価値やベネフィットについてコミュニケーションをとることができれば事態は改善されるはずだ。そのために両者はもっと顧客にフォーカスした言葉を使い、対話する必要がある。

エグゼクティブがプロジェクトマネジメントに関心を持ってくれたとして、良いスポンサーになってもらうには相応のトレーニングが必要ではないか。

 世界中の大学がエグゼクティブ向けのオンライン教育コースを提供しており、そこでプロジェクトマネジメントを学んでもらうのがよいと考えている。9月にはオンラインのオープンコースを開講する予定である。当然、プロジェクトマネジメントの専門的な言葉ではなく、ビジネスの言葉を使う。ロジャー・マーティン、リタ・マグラスという戦略論で著名な識者や、さらに多くの方がこのオンラインコースに貢献してくれる。