失敗の直接原因はスコープにある

 2点目のスコープマネジメントとはプロジェクトのスコープ(範囲)をはっきりさせておき、スコープを変える場合、スポンサーを交えて意思決定をすることだ。ここでもエグゼクティブの関与が欠かせない。

 スコープマネジメントがおろそかになるとプロジェクトの途中にスコープが曖昧になったり、意思決定がないまま変わってしまったりする。この状態をスコープクリープと呼ぶが、プロジェクトの52%で発生している。しかもスコープクリープの発生頻度はこの5年で20%も増えている。

 3点目の成熟度とは、組織としてプロジェクトマネジメントをこなす力がどのくらいあるかを示す。組織として、という点が重要だ。プロジェクトマネジャやリーダーを担う少数をトレーニングしただけでは組織能力を高めることはできない。

 プロジェクトに関わる全員、すなわちプロジェクトチームに入る社内外のメンバー、プロジェクトの成果物を受け取る事業部門の担当者たち、スポンサーが、プロジェクトマネジメントを理解し、協力し合うことで、組織の能力を高めていける。トップエグゼクティブの働きかけがないと、こういう状態はつくれない。

プロジェクトマネジメントに経営者が関わることが大事だと、どう伝えるのか。

 まず、社内の現場から上層部に働きかけるやり方がある。我々PMIは組織のプロジェクトマネジメント力を高める支援をしている。例えばPMIの調査結果を使って、プロジェクトチームがエグゼクティブに説明できる。

 とはいえ、お話しした通り、83%ものエグゼクティブがプロジェクトの失敗は戦略の問題ではないと感じている。そこで、もう一つの手段として、エグゼクティブにメッセージを直接伝えるブライトライン・イニシアティブ(Brightline Initiative)という活動をPMI主導で1年半ほど前から始めた。

 プロジェクトマネジメントが組織にもたらす価値を重要視している団体や組織の協力を得てイニシアティブを進めている。調査を実施し、結果を出版し、各国でイベントを開き、エグゼクティブにメッセージを送ってきた。

プロジェクトマネジメントで使う言葉が独特で経営者にわかりにくいのでは。

 確かにプロジェクトマネジメントの言葉、特にIT(情報技術)関連のプロジェクトマネジャが使う言葉はエグゼクティブが使う言葉と違う。そこでブライトライン・イニシアティブではエグゼクティブに通じる言葉を使い、理解が深まるように配慮している。

 一例として、エグゼクティブがプロジェクトで成功するための手助けとなる10の指針をつくり、Brightline.orgというサイトで公開している。

<例えば「戦略実行の重要性は戦略立案と同等(Acknowledge that strategy delivery is just as important as strategy design)」、「チームの絆を強くし、組織横断の協力を進めよ(Promote team engagement and effective cross-business cooperation)」といった指針がある。指針の説明文も「プロジェクトの外にいる顧客と競合相手を見よ(Don’t forget to look outside!)」「動かない中間管理職に気を付けろ(Beware of the “frozen middle!”)」など、わかりやすい。>

10の指針について反応はあったか。

 非常に高い関心が寄せられている。新しい取り組みなので当初は我々がプロモーションをする必要があったが、多くの民間企業からイニシアティブに参加したいという問い合わせがあり、興味を示す企業が増えてきている。ワークショップを年に数回開催して、10の指針の活用方法を広めている。