なんとか売買が成立したとしても7月23日付日経の記事が報じた通り、人事面の調整がM&Aの後で欠かせない。既存大手企業とスタートアップの給与や就労の条件を比べると大きく異なっていることが多い。

IT企業に特化したM&A支援も

 それでもM&A支援を手がけるアドバイザリー各社は可能性をにらみ、IT企業のM&Aも積極的に進めようとしている。そうした中、IT企業のM&Aに特化した専門企業も登場した。

 2016年12月設立のM&AテクノロジーはIT関連のM&Aだけを支援する。木寺祥友社長は同社の特徴を「経営や事業とITの両方を踏まえて企業の価値を判断できること」と説明する。

 木寺氏は1995年当時、登場してまもないソフトウエア開発言語Javaを使ったプロジェクトを日本でいち早く手がけた技術者として知られる。Javaに加え、スマートフォンの基本ソフトAndroidを取り扱うソフトウエア開発企業を経営してきた。大学を出てすぐ起業したため、社長歴は30年を超える。

 そのかたわらIT業界における顔の広さからM&Aの相談を受けることが度々あった。日本でIT企業のM&Aが活発になると考え、M&Aテクノロジーを設立した。

 売り手のIT企業に対しては、保有技術の内容、技術者のスキル、製品やサービスの販売実績と将来性などを木寺氏が評価し、「こういう企業に買ってもらえれば相乗効果が出るのではないか」という事業計画案を売り手に提示、計画を一緒に立てる。

 一方、買い手のIT企業については、M&Aに積極的なところ、担当者を置いているところと連絡を取り合い、ニーズを聞き、それを満たす売り手を探していく。

 企業全体をまとめて売買するとは限らない。「例えば開発してきたインターネットサービスを他のサービス企業に、技術者がいる部門をソフトウエア開発企業に、それぞれ売却するといったやり方もある」(木寺氏)。

 IT業界は今、ITを使って事業を変革する「デジタルトランスフォーメーション」という言葉を喧伝している。本当に変革するには、企業そのもの、事業や技術、そして人材、それぞれの流動化が必要になる。IT業界が言葉通りに変革を進めるなら、老舗とスタートアップ、そして一般企業を巻き込んだM&Aがますます増えるだろう。