流通、金融、製造などIT企業ではない異業種がIT企業を買う動きも出つつある。小売業が自社の電子商取引事業を強化するためにITの技術者を抱える企業を買う。製造業が自社製品の稼働状況を監視するインターネットサービスを始めるためにIT企業を買う。

 事業の変化に応じて社内の情報システムを素早く改修するため、技術者を抱えようとM&Aに踏み切る場合もある。日本企業の多くはIT関連業務の大半を外部に委託しており、社内にITの技術者をほとんど抱えておらず、情報システムの機動性に問題を抱えている。

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株式公開だけがゴールではない

 一方、IT企業の売り手はどうか。前述の通り、後継者がいない老舗のIT企業がある。さらにITのスタートアップも売り手の候補になる。

 技術とアイデアがあり、ベンチャーキャピタル(VC)から出資を受け、製品を開発、売り出したものの、急成長というわけにはいかず、なかなか株式公開に至らない。経営や製品開発の方針を巡り、VCがあれこれ口を出す。こうなると創業者はつらい。買ってくれるところがあれば売ってしまいたいと考える。株式公開だけがゴールというわけではない。

 大企業の販売チャネルや顧客資産を使う狙いで、大企業に買ってもらい、傘下に入るスタートアップもある。7月23日付日本経済新聞の記事によると「2018年はこうしたM&Aが昨年を上回るペースで拡大」するという。

 IT企業のM&Aに関して売り手と買い手は揃いつつあるわけだが、課題もある。何と言っても売買の対象となるIT企業の評価がしづらい。

 IT企業の資産の多くはソフトウエアないし技術者であり、工場や店舗あるいは土地といった目に見える資産を持っているわけではない。財務諸表の評価だけでは不十分になるが、そもそもIT関連の用語自体が分かりにくい。

 インターネットサービスをしている企業であれば会員顧客や取引データが、機械学習やブロックチェーンなど新しいITを手がける企業であれば開発実績や技術者の経験が、それぞれ資産と呼べる。これらを評価するには、技術そのものと技術が事業にもたらす価値を判断し、さらに欧米の類似企業の売買価格を調べないといけない。