変革の旅路は永遠に続く

 エンタープライズのアーキテクチャ(設計様式)を描くEAは今後目指す姿を見定める有効なやり方ですが、固定された完成図を描くものではありません。変革の旅は10年ではなく、企業が存続する限り続きます。

 旅の途中、事業環境は変化します。経営者や実務担当者の考えや判断に応じ、ビジネスと情報システムを変え続けないといけません。EAの中でデータアーキテクチャ(データモデル)は変化の影響を最も受けにくいとされていますが、それでも必要に応じて見直していくことになります。

 EAの導入が日本でいったん失敗に終わったのは、完璧な図をいきなり描こうとした点、つまり手段であるEAが目的になってしまったからだと思います。

 生産性革命を後押しする目玉施策、コネクテッド・インダストリーズ税制を適用するため、経産省は「データ連携・利活用の内容」を提出するよう、企業に求めています。データの話ですからデータモデルないしデータアーキテクチャの有無を応募資料に記載してもらってはどうでしょう。

 すでにあれば良し、無い場合はその投資の中で企業の全体像を見渡せるデータモデルづくりに取り組んでもらいましょう。「データ連携・利活用により生産性を向上させる取組」の前提はデータモデルです。それが無いまま、いくら攻めのIT投資をしても悪しきレガシーを再生産するだけに終わります。

 生産性革命と並んで重要な人づくりに触れることができませんでした。4月4日の挨拶で中野課長は「経営戦略と事業の現場、そしてITを両方知っている人がいない」と仰っていましたが、日本に最も足りないのはビジネスやデータに関するモデルやアーキテクチャを描く人です。

 正確に言えば人はいます。「組織が持つ固有の知識と知恵」という良きレガシーを持った現場の人です。ただし、その人がモデルを描く活動がほとんど見られません。これはITの専門職がする仕事では本来ありません。


 本原稿を7月2日に執筆しました。新税制の6月施行に合わせて拙文を公開しようと考えていたのですが執筆が遅れました。

 7月は人事異動の時期であり、拙文公開時に中野課長は異動されているかもしれませんが後任の方にも役立つ内容と思い、公開する次第です。

敬具
谷島宣之
日経BP総研 上席研究員

『世界を動かす技術』に関する意識調査

2030年、どのような技術が世界を動かしているでしょうか。社会の変化、技術の潜在力、そして人々の意識といった要因が絡みます。そこで日経BP総研は新技術への期待や利用意向を探るオンライン調査を実施中です。ぜひご協力ください。

調査回答ページはこちら