新しく入れる情報システムは大丈夫なのか

 新税制の創設を評価するものですが心配な点があります。

 レガシーシステムが悪しき遺産になったのは情報システムを企業に導入するやり方にそもそも問題があったからです。やり方を変えずに新しいシステムを買うようでは別の悪しき遺産を抱え込むことになりかねません。

 どうしたらよいのかと考え、日経コンピュータ誌5月10日号に『レガシー刷新を急ぐな、まず遺産相続の計画を』という一文を書きました。そこから引用しつつ、新税制を成功させる知恵をご紹介します。

 企業が長年使ってきたレガシーシステムには良くも悪くも事業や業務の工夫とその結果が蓄積されています。遺産には敬意を払い、批判しつつも良い点があれば引き継ぐ。革新ではなく保守の姿勢がIT投資にも欠かせません。

 古いコンピュータやその上で動かしている基本ソフトを捨て、最新のものに取り替えればコストを下げられます。ただし業務を処理するアプリケーションソフトを新しいコンピュータの上に移植して使い続けるのであれば情報システムのメンテナンスにかかる手間はほとんど変わりません。

 アプリケーションが同じなら仕事のやり方も同じであり生産性は上がりません。それはまずい、古い業務アプリケーションを捨て、汎用のクラウドコンピューティングサービスやパッケージソフトに切り替えればよい、と仰るかもしれません。

 ところが従来手作りしてきたアプリケーションと比べると汎用品の機能には過不足があります。結局、企業の現場担当者がPCの表計算ソフトなどを使って足りない機能を埋め合わせることになったりします。データの一貫性が保てなくなり、「データ連携・利活用」に支障を来します。

情報システムにも都市計画を

 やはりITの導入方法から見直さなければなりません。

 急がば回れという通り、レガシー刷新に取り組むには遺産が大きければ大きいほど相応の準備、例えば都市の再開発計画のようなものが必要です。

 再開発する際、都市の活動を止めるわけにはいきませんので、一貫性がある計画を立て、再開発を常時進め、徐々に都市を生まれ変わらせていきます。企業の活動も止められませんから、レガシーシステムの見直しについても同様のやり方が求められます。

 一貫性を備えた計画を立てるにはまず、事業と情報システムの全体像を見定めなければなりません。

 製造業向け情報基盤の整備に取り組む特定非営利活動法人、技術データ管理支援協会(MASP=Manufacturing Architecture for Series Products)が提唱しているやり方を説明します。

 MASP理事の手島歩三氏(ビジネス情報システム・アーキテクト代表)は情報システムの定義を「組織が持つビジネスの知識と知恵をITによって活用するための仕組み」としています。

 組織が持つ固有の知識と知恵こそ良きレガシーです。知識と知恵の多くはデータとして表現でき、そこには構造があります。手島氏は「知識と知恵の構造を把握し、情報システムのどの部分にどの知識や知恵を組み込むのか、IT担当者ではなく、実務担当者が自分の頭で考えよう」と説いています。