見極めをすることになっていた2015年12月末より少し前、12月10日に経済産業省の幹部(資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力市場整備室長)は委員会で次のように説明した。これまた長いが議事録から引用する。

 それから、準備状況ということで言いますと(中略)システムの開発、それからスマートメーターの設置状況と、こういった点もこの小委員会の第1回でご議論いただきました。その際にも、一部開発が遅れる可能性があるといったような話がありまして、今もまさにシステムの整備が進められているところではありますけれども、今、直近の状況ということで言いますと、第1回、前々回にご説明したところから基本的には変わりはないというように考えております。

 具体的には、例えば、あの場でご説明いただいた東京電力の取り組みも、今週また確認したところでは、スケジュール通りには今来ています。引き続きそのリスクはあるけれども、ぎりぎりのところで今、スケジュールに沿った開発・整備が進んでいますというご説明がありまして、そういう意味で、本日この場では特にその点についてはご説明の機会は設けておりません。

 ただ、言うまでもないところですが、情報システムの開発、今はよくてもこれからさらに進めていく中でいろいろ遅延、それからトラブルもあり得るところですので、それらについてはこの場とは別途、しっかり状況をフォローして、作業遅延の場合の対応というのをしっかり検討していくということにしたいと考えております。

 具体的には、それこそ年明け以降にスイッチングの申し込みも始まっていくと思いますし、いろいろな形で動きが出ていく中で、また必要に応じてここの場でもご議論いただきたいとは考えているところですけれども、現時点において具体的に何か遅延が生じていると、あるいは何か対応を変えなければいけないという状況にはなっていないというふうに考えております。

(総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会
第3回電力基本政策小委員会における発言)

 さらに経済産業省幹部は電力基本政策小委員会について「次回は年明け1月下旬あるいは2月の開催を予定していまして、その際には小売全面自由化、まさにスイッチングの受付も始まっています」と述べていた。

東電は託送業務システムを動かし始めている

 まとめるとこうなる。経済産業省が東京電力に対し12月7日の週に確認したところ「何か対応を変えなければいけないという状況にはなっていない」。委員会の開催は1月末以降にする。上記の発言を読むと何かが起きるとしてもそれは「年明け以降にスイッチングの申し込みも始まっていく」時か、それ以降だと見ていることが分かる。

 委員会の開催とは「別途、しっかり状況をフォローして、作業遅延の場合の対応というのをしっかり検討していく」と述べていたから、12月末に経済産業省と東京電力は託送業務システムを利用した「サービス提供ができるかどうか、おおよその見極め」について話し合ったはずである。だが、12月の第1週と第4週で状況が大きく変わるとは考えにくく、自由化に向けた準備をそのまま続けることになったとみられる。

 託送業務システムのうち、スイッチングに備えて需要家の情報を小売り事業者に提供し、託送の申し込みを受け付ける機能は2月までに動かさなければならない。使用電力量の通知や託送料金を計算する機能は3月末から動かす。正確に書くと託送業務システムの本番は自由化が始まる4月からではなく、その2カ月前からになる。この拙文が公開される1月末には一部の機能の本番利用が始まっているのではないか。

 つまり東京電力は託送業務システムを動かし始めている。残る機能も無事に動かせれば冒頭で述べた奇跡の到来になる。

奇跡が起きるための4条件

 もちろん経済産業省幹部が述べた通り、「情報システムの開発、今はよくてもこれからさらに進めていく中でいろいろ遅延、それからトラブルもあり得る」。奇跡が起きるために必要と思われる諸条件を考えてみた。次の4点である。

  • 量を減らす

  • チームで動く

  • やり方を変える

  • 士気を保つ

 経済産業省、東京電力、三菱電機が自由化に向けて託送業務システムの開発を続行しているところを見ると3者は4点に対処済みなのかもしれない。順番に説明する。