相談者は一人暮らしを経験してみるべきだと思う

ミツハシ:たしかに、「一人生きていけるのか」というのは大げさですよね。相談者にとって、京都は我々にとってのアマゾン奥地くらいにミステリアスでデンジャラスな遠い世界なのかもしれません。

シマジ:この歳まで親元で楽チン人生を歩んできた相談者にはそれくらいの冒険なのだろう。だとしたら、まずは親元を離れて一人暮らしをしてみることだ。仕事はそのまま公務員を続ければいいから、自分一人の稼ぎで自分の生活を全てまかない、毎日のメシをつくり、一人孤独な時間とも向き合ってみるといい。アパートの1室を自分の小さな王国にして、その中で満足のいく生活ができるようなら、相談者は自信を持って京都に行けばいい。

ミツハシ:でも、相談者は「年齢的に、結婚、出産のタイミングを逃す不安もあります」と書いています。一人暮らしの練習は必要でしょうが、そうすると転職のタイミングはだいぶ遅くなってしまいます。その間に、京都の「これはと思う採用」自体がなくなってしまうかも知れません。

シマジ:ミツハシはそれがそんなに問題だと思うか?

ミツハシ:うーん、実は思っていません。相談者の悩みは本当は別のところにあると感じています。親の勧めのまま公務員になって実家暮らしを続け、「これはこれでよし」と納得したつもりでいながら、相談者の心の奥には「私の人生、本当にこれでいいのだろうか」という疑問がずっとくすぶっていたのではないでしょうか。「これはと思う採用」というのは、たぶんきっかけに過ぎず、心の中にしまってきた疑問を7、8年ぶりに直視させられ困惑しているというのがいまの状態ではないかと思います。

シマジ:俺もそう思うね。「結婚、出産のタイミングを逃す不安」なんていうのも京都での転職をためらわせる理由になっていない。日本国の民法は埼玉の女と京都の男の結婚を禁じていない。京都のみやびな男を引っ捕まえればいいだけのことだ。

 相談者が早く結婚して子供を生みたいと思っているのなら、既にそうしていたはずでね。やはり、他人と2人でゼロから生活を築かなければいけない結婚のわずらわしさよりも、気楽で心地よい実家暮らしの方を選んできたんだよ。だとしたら、このまま埼玉の実家にとどまったとして、相談者が結婚に向けてスパートを掛けられるかは疑問だ。

 だからこそ、相談者は一人暮らしを経験してみるべきだと思う。自分で自分の暮らしを成り立たせることができれば、結婚生活に対する自信もつくかもしれない。それに何より、10年後20年後のことを考えたら、実家暮らしというのは気楽なままではあり得ない。いまは元気な親も確実に衰えるからね。