ちょっと無謀なような気がする

ミツハシ:男と女でアドバイスが変わるのですか。

シマジ:一般論として女は男よりも生活というものに対して保守的だ。しかも、この相談者は大学卒業時にイージー・ゴーイングを選んだ女性だ。「漠然とやりたいことはあったものの、それが実現できる就職先が思い当たらず」と書いているが、「やりたい」という気持ち強ければ、それを実現できる場所を必死に探していたはずだよ。100%とはいかなくても、少しでもやりたいことに近づけそうな仕事に飛び込むという道もあったはずだ。

 働いて社会を知るにつれ、漠然とした希望の仕事ははっきりした像を結ぶようになっただろうし、そこへつながる道もいろいろと見えてきたはずでね。なのに、30歳になるまで行動を起こさず、気楽な実家住まいをしてきたことを考えると、この相談者がいきなり知らない土地で人生の再出発を切るというのは、ちょっと無謀なような気がする。

ミツハシ:でも、30歳の大人ですよ。一人で暮らすくらい何とでもなるでしょう。

シマジ:俺にはそうは思えない。男も女も同じだが、心も体も成熟したヒトという動物は、他の動物と同様親から離れようとするはずなんだ。自分の遺伝子を次世代に伝えるという本能に従い、ツガイの相手を見つける旅に出る。いままでそうしなかったということは、自分で人生を切り開く冒険よりも、親の庇護の下に生きる安定の方をより高く評価したということだよ。

ミツハシ:そうした性格や人生観は簡単には変わらない?

シマジ:「京都に行けば、慣れ親しんだ親友、趣味のピアノの先生や友達、悩みを聞いてくれた上司や同僚、最近気になり始めた彼とも会えません。実家暮らしの私が、見知らぬ土地で一人生きていけるのか、揺れています」という文章がすべてを表している。

 埼玉と京都なんて新幹線を使えばわずか3時間だ。チベットやアマゾンの奥地に行くわけでもあるまいし、京都なんて朝の新幹線に乗れば昼飯前には帰って来られる。慣れ親しんだ親友にも気になり始めた彼にも、その気になればいつだって会える。京都に住むのも同じ日本語を話す日本人であり、趣味のピアノを向こうで習うことだって、新しい友達をつくることだって何ら障害はない。

 30歳くらいなら、「京都か、面白そうだな」と新しい生活に好奇心を抱いてもおかしくないと思うが、「一人生きていけるのか」と不安になる時点で、この相談者には見知らぬ土地での転職はハードルが高すぎる。