いいか、男の値打ちは墓場と酒場で決まるんだ

ミツハシ:おお、いいですね。彼女の口からどんな答えが返ってくるにせよ、ここまでやれば、相談者の心のモヤモヤは晴れるでしょう。

シマジ:それが大事なことなんだ。たとえその先に待ち受けているのが望んでいたのとは違う結果であったとしても、ことを起こさずに後悔するより、ことを起こして傷つくほうがずっといい。

 しかも、これはうまくいく確率が高い作戦だと俺は思う。もし、彼女が相談者のことを憎からず思っているなら、墓前の告白作戦に彼女は圧倒され、思わず笑ってしまうだろう。パラダイムの転換で大事なのは、当事者たちが深刻に思っていることを、笑いに変えることなんだ。

ミツハシ:ワンちゃん着ぐるみ大作戦(第182回参照)と同じですね。

シマジ:その通り。一度笑ってしまえば、それまで深刻に思い悩んでいたことが、実はそれほどの難問ではなかったと気づく。死んだ恋人にいつまでも心を寄せ、悲劇のヒロインに酔っている自分の姿を客観的に見られるようになる。彼女の心の中に深く立ち込めていた霧はサッと晴れるはずだ。

 それでも、彼女から色よい返事が返ってこないなら、そこまで死んだ男に呪縛されているような女とは付き合わないほうがお互いのためだ。あるいは、死んだ恋人というのは、相談者を傷つけずに交際を止めるための方便だろう。いずれによせ、そのときは潔く諦めなさい。

ミツハシ:どっちに転ぶか分かりませんが、ドラマチックな結末が待っていそうなので、ぜひ相談者はこのアドバイスを実行に移して、その結果を報告してください。

シマジ:いいか、ミツハシ。男の値打ちは墓場と酒場で決まるんだ。酒に酔い無防備になる酒場で男は本性を現し、墓場においてその一生を裁かれる。この話を以前、阿久悠さんにしたら、「カッコいいね、その言葉。使っていい」と尋ねられてね。それで生まれたのが、ジュリーが歌った「酒場でDABADA」だ。