秘密を墓場まで持っていける男かどうかを見極めよ

ミツハシ 褒めてくれますか。

シマジ  ニヤニヤ笑いながら聞くな、ミツハシ。少なくとも俺は、「週刊プレイボーイ」の編集長になったとき、今(東光)さん、シバレン(柴田錬三郎)さん、開高(健)さんの墓にお参りして「自分が部下だとして、こういう編集長だったら命がけでお仕えすると言える、そんな編集長を目指します」と誓った。その誓いの中には当然、仕事の面だけでなく、男として部下が憧れる先輩男性像も入っている。ゆえに、女を口説くにしても部下たちが「俺たちもかくありたい」という相手でなければならなかったんだ。

ミツハシ では何ですか、銀座のお姉さんがたを口説いたのも、マネジメントの一環だったと言いたいわけですか。

シマジ  それが主目的とは言わないが、あれほど美しい魚が回遊する豊かな漁場があれば、挑まなければもったいないじゃないか。

ミツハシ そんなシマジさんからすれば、後輩の婚約者を寝取った先輩は、男としてはちょっとみっともない?

シマジ  まあ学生だから、まだ世界が狭いのは仕方ないだろうし、小さな世界の中でのホレたハレたを馬鹿にされることもないだろう。だから、みっともないとは言わない。ただし、相談者がこの先輩との関係を深めるというなら、十分注意してくれ。何といっても、そのことが婚約者に伝われば、婚約者の負う傷は、普通の失恋とは全く違うレベルのものになる。 小さな組織の中で男女の仲になった2人というのは、たいていは周囲に感づかれる。それでも女はシタタカだから、上手に2つの顔を使い分けるが、男は不器用なのが多いからつい態度や言葉がぎこちなくなる。こういう関係はほとんどの場合、男からバレるんだよ。だから、関係を深めるのならば、先輩の器量をちゃんと観察して秘密を墓場まで持っていける男かどうかを見極めることだ。

 もし、先輩の方により強く心惹かれるようになり、婚約者に対する愛情を失ったなら、きちんとケジメをつけて婚約解消を伝えるように。何度も言ってきたように人生は運と縁だ。婚約をした人間の目の前に、もっと素敵な異性が現れ、婚約相手への愛が醒めてしまうこともある。その結果、婚約を破棄した人間なんて世の中にはごまんといるし、そのことを非難できるものでもない。ただし、結婚式の最中に花婿を残して逃げ出すような真似をしてはいけない。それが拍手されるのは映画だけの話だからね。

本記事は、 nikkei BPnet から転載したものです