前回までのまとめ
 これまでの連載を通じて、私たちは「破壊的イノベーターになるための7つのステップ」のうち、①どのタイプのイノベーターになるか戦略を立て、②多様なメンバーをチームに集め、③「無消費者」や「満足過剰な顧客」を探し、④「正しい」ブレインストーミングを行い、⑤「破壊的アイデア」を選び出す──やり方までを学んで来ました。(以下の■図1参照)
■図1 破壊的イノベーターになるための7つのステップ
今回からは⑥「新しい酒(破壊的イノベーション)は新しい革袋(別組織)に任せる」の項目について学びます。

最重要ステップの解説を開始します

 さて今回からは、私が7つのステップの中でも最も重要と考えている「破壊的イノベーションは、独自の経営資源を持ち、経営資源を配分する価値基準や仕事のプロセスを独自に設定できる、『別組織』でないとうまく育たない」というお話をさせていただきます。

破壊的イノベーションの定義を覚えていますか?

 ここで、破壊的イノベーションの定義と性質についてもう一度おさらいをしておきましょう。

 本連載の第3回「『破壊的イノベーション』は『オモチャ』から始まる」でもお話しした通り、破壊的イノベーションによる製品・サービスは、既存製品・サービスの主要顧客には性能が低すぎて魅力的に映りません。しかし、新しい顧客やそれほど要求が厳しくない顧客にはアピールする、シンプルで使い勝手が良く、安上がりな製品やサービスをもたらすタイプのイノベーションなのでした。

 例えば、当初は解像度が低くレンズも暗いため、本格派のカメラマンからは見向きもされなかった携帯電話やスマホ付属のカメラが良い例です。

 ここで重要なポイントは、破壊的イノベーションから生まれた製品やサービスは、既存製品の主要顧客が重視する性能が低過ぎるため、そうした既存顧客に見せても見向きもされません。当初はオモチャ呼ばわりされ、「そんなものは要らない」と拒否されてしまうイノベーションなのでした。

既存組織には破壊的イノベーションは原理的に起こせない

 そして、本連載の第4回「イノベーションを知らないノキア、熟知したアップル」でも申し上げましたが、既存企業は、既存顧客や株主が満足するような、市場の上方向(利益率が高まる方向)には上っていける(持続的イノベーションは出来る)が、市場の下(利益率が下がる方向)には降りられない「非対称的モチベーション」を持っています。ですから、既存顧客が求めていない、利益率が低く破壊的なビジネスモデルのアイデアを既存組織内で育てようとしても、まずうまく行かないのです。

 人材や資金などのインプット(投資)を価値の向上というアウトプットに変換するプロセス(仕事のやり方)や、経営資源の配分を決める価値基準は、企業の既存優良顧客の満足度を最大化し、株主の求める利益を提供できるような「持続的イノベーション」のプロジェクト案は受け入れて実施します。しかし一方で、既存顧客にオモチャ呼ばわりされ、新しいビジネスプロセスが求められるような破壊的イノベーションは通さずに却下するように出来ているからです。