従来とは異なる販売チャネルへの挑戦

■試験項目⑥市場へのチャネルはどうなっているか?
[すべて既存のチャネル(0点)/少なくとも半分は新規チャネル(5点)/まったく新しいチャネル(10点)]

 破壊的イノベーションの場合、既存のチャネルで売ってもらおうとしても、例えば価格が従来製品の5分の1であるため、既存チャンネルの販売担当者はそれを進んで売ろうとしてくれない可能性が高いです。

 ミニコンピューターで一世を風靡したDECは、マイクロプロセッサーを使ったパーソナルコンピュータの時代の到来を正確に理解し、何度も参入を試みましたが、ことごとく失敗しました。それは、既存のミニコンの販売チャネルでパソコンも売ろうとしたためです。DECのセールスパーソンは、売上高に応じた報酬体系だったため、いくらトップが「パソコンを売れ」と言っても、自分の報酬が大きくなるミニコンの販売を優先したのです。

ライバル企業が「気にしない」市場が好ましい

■試験項目⑦競合他社はこの戦略をどう考えているか?
[すぐにでも対応したい(0点)/注目しておきたい(5点)/気にしていない(10点)]

 これまでの試験項目とも関連するのですが、ニーズが明確で、誰もが目指すハイエンド商品の開発は、ライバル企業もまた目指しがちです。例えば、ダイソンが先鞭を付けたサイクロン式高級掃除機市場は、その後、日本メーカーもこぞって参入し、より日本市場に合ったキメの細かい使い勝手をセールスポイントにしてダイソンを攻めています。

 一方、ローエンド型(低価格型)破壊のイノベーションの場合には、ライバルメーカーはそれらを既存製品の主要顧客に見せても「あんなオモチャは要らない」と言われるため、馬鹿にして気にしない場合が多いものです。以前、私がスクラップを電気炉でリサイクルして鉄を作るミニミルの技術をどう思うかと高炉メーカーの方にうかがったとき、「あんなもの、大したことありませんよ。ミニミルじゃあ自動車用鋼板なんて、出来っこありませんからね。」と馬鹿にしていました。しかし、今やミニミルの技術は進歩し、自動車用にも鋼板を供給できるまでになっています。

 「孫子」においても「百戦百勝するより戦わずして勝つことの方が上策だ」という趣旨のことが述べられていますが、強大なライバル企業が「すぐにでも対応したい」と思ったり、「注目しておきたい」と思われるより、「気にしない」市場を狙い、そこを独占することの方が、戦略としてより優れているわけです。

破壊的イノベーションから収益を上げるには時間がかかる

■試験項目⑧初年度の収益はどうなるか?
[多額(0点)/平均的(5点)/少額(10点)]

 この試験項目とそれに対する配点も、一般的なビジネスの常識とは正反対です。普通、ビジネスプランを審査する際には、なるべく早い時期から多くの収益が上がるプランが評価されます。しかし、破壊的イノベーションの場合には、当初、誰がどのような製品を求めているのかが明らかでないため、探索のための期間が必要な場合が多いです。収益を初年度から性急に求めると、破壊的イノベーションのアイデアを持続的イノベーションのビジネスモデルに無理矢理はめ込むという誤りを犯してしまう恐れが高いのです。