そんなおハイソなビルの地下1階に、その“ハイエンド床屋“はありました。内装は美容室さながらで、外から陽光が降り注ぎ、「GQ」などの高級雑誌を備えた待合室で待っていると、予約時間通りに、いつも担当してくれる理容師さんが呼びに来ます。ウッディな廊下を歩き、ゆるやかなBGMが流れる個室に案内され、希望を告げると、おもむろにカットが始まります。

 使っているシャンプーやトリートメントも他の床屋さんとは違い、自然な匂いがします。良く分かりませんが、“オーガニック”なものなのだそうです。

 さて、このハイエンド床屋、カットしてもらうだけで4千円近くしました。理容師さんの指名料は、500円追加です。予約ができるので、時間が読めるのは良いのですが、指名料も入れるとカット1回約5000円という価格が、私の乏しいお小遣いに与えるダメージは相当なものでした。

持続的イノベーションの高みを目指して失速

 そんなある日、そのハイエンド床屋からダイレクトメールが届きます。曰く、

「当店はお客様のさらなる御満足を目指して、内装を一層落ち着けるものとするとともに、以前あったカットのみのコースを廃止させていただくことになりました。

 新しいトータルケアコースは、7500円より承ります。」

たまだは、しんでしまった!。

おお、たまだよ、しんでしまうとは、なさけない…

 プロフィールの写真をご覧いただければ判るとおり、私は、髪の毛に不自由しています。ほんのちょっぴりの髪を切るために、7500円は、いくらもの好きの私でも払えません。

 私は、この床屋に行くのをやめてしまいました。ほどなくして、わたしがその床屋の前を通りかかると、張り紙がしてあるのに気付きました。

「閉店のお知らせ」

 どうやら、この床屋さんが目指したハイエンド路線に付いて行けなかった顧客は、私だけではなかったようです。もしかすると、この床屋の経営者は、高く高く飛びすぎて、太陽の熱で翼が取れてしまったのかも知れません。

QBハウスという名のローエンド型破壊

 さきほどの“ハイエンド床屋”とは逆に、ヘアカットでローエンド型破壊を実現したのがのQBハウスです。