自分にそうした記憶があったから、私はそうなるまいと小さい人に常に敬意を払ってきました。人間として対等というよりむしろ、大人よりも賢く感性も汚れていない、自分より上の存在だと考えて接してきました。

 小さい人は、すべてをお見通しです。大人たちは、相手が3歳、4歳児であっても、名前を聞く時には「恐れ入りますが、お名前をお聞かせ願えませんでしょうか」と言うくらい敬意を払ったほうがいい。小さい人は言葉が分からなくても、自分よりずっと大きな人間が敬意を払っていることは分かります。逆に、わざと無礼な振る舞いをするような場合は、容赦しません。先日も近所の小さい人を、「この野郎、ふざけるんじゃねえぞ」と徹底的にやりました。83歳の老人が小さい人を道の真ん中で罵倒している姿は、異様に見えたでしょう。

 でも、それでいいんですよ。その小さい人にとって私は、正面からぶつかってきた初めての大人だったんでしょう。周囲の大人を「あんた」と小ばかにしていた小さい人が、翌日から私を「おじいちゃん」と呼んでニコニコと慕ってくるようになりましたから。

 「ノッポさん」の名前が重荷で捨てようとしたこともありました。それでも今、こうして当時の帽子をかぶっているのは、「ノッポさん」として伝えるべきことがあると思うからです。保育園が騒々しいと周囲の老人が文句を言ったり、若者が老人を無視したり。人間の根本が壊れていくようで、私は悲しい。もっと、人を好きになってください。もっと、小さい人に敬意を払ってください。みんなが愛せる国を造るには、一生懸命、人間が人間に優しくする以外にないのですから。(談)