(日経ビジネス2018年4月16日号より転載)

和して同ぜず。 今を当たり前と思わず、妥協なく、協調すべし

(写真=鈴木 愛子)

 2012年から第19代日本医師会会長、17年10月から第68代世界医師会会長の任に当たっています。

 世界という単位で医療を見渡すと、国や地域によって様々な違いがあります。例えば、医療機関がないところもまだまだ多い。そうした地域の人々が十分な医療を受けるための体制をどう整えるか。医療レベルを“世界基準”に引き上げるにはどうすべきか。将来的には、その地域を担う医師を育成する教育機関を設置するといったことも重要です。あるいは、紛争が続く地域で武力衝突に巻き込まれてけがをした人たちの治療をどうするか。現地に入る医師たちの安全をどう確保するかなど、文字通り、命にかかわるシビアな問題が厳然と存在しています。

 日本で生活していると、自宅の近くに医療機関があって、かかりつけの医師がいて、気軽に相談できて、保険医療が受けられる。それが当たり前と思いがちです。しかし、それは戦後、何もないところから、手遅れになるまで医療機関にかかれない人がたくさんいる悲惨な状況を何としても変えなければいけないという決意の下に築き上げてきた、日本が世界に誇るべき仕組みです。

 先進国であっても、例えば英国では、ホームドクターが紹介しても専門医療を受けるのに予約してから1カ月以上も待たなければならないといったことが、かつては起きていました。米国では5000万人の保険未加入者がいましたが、「オバマケア」によって2000万人の保険加入を実現しました。しかし、トランプ大統領はその見直しを宣言しています。