そしてメモを見ながらではなく、相手の目を見て議論するのです。時にはその場で大きな決断を迫られることもあります。そんな時によりどころとなるのが、数多くの経験を通じて培ってきた知見、つまり「現場力」です。

 現場力とは様々な能力が絡み合う複合的な力ですが、「洞察力」「瞬発力」「行動力」「コミュニケーション力」という4つの要素に大きく分けられると思います。

 洞察力は好機や危機を察知する力、瞬発力はそれに反応してすぐに動ける力を指します。行動力はリスクを取ってでも挑戦したり、うまくいかない時でも粘り強く取り組んだりすることで身に付きます。コミュニケーション力は周囲を巻き込み、動かしていくのに欠かせない力です。

 経営者の役割で最も重要なことの一つが人材育成です。私は若手社員に現場力を身に付けさせるため、「修羅場、土壇場、正念場」を経験するように促しています。ギリギリのところまで自分を追い込むことによって、現場力は高まるからです。

 私自身、若いころに数多くのトラブルや失敗を経験したからこそ、このことを実感しています。どんな仕事にもリスクは常に隣り合わせにあると体験を通じて知ることで、リスクがあっても躊躇せずに新しいことに挑戦する意欲も高まります。

 もっとも、経営者には失敗は許されません。会社の存亡に関わるからです。「社運を賭けたプロジェクト」はやってはいけないと思っています。どんな状況にも対応できる準備をした上で決断を下すことが経営者の役目なのではないでしょうか。(談)