(日経ビジネス2018年3月19日号より転載)
対話は常に真剣勝負
大きな「決断」下すには経験重ね、現場力を高めよ

初任地の大阪で5年勤め、東京本社へ異動する時の送別会で、上司にかけられた言葉が今も胸に残っています。「会社のことを本当に考えるのなら、お客様に対して時にはきついことも言わなければならない。けんかになることもあるかもしれないが、それが会社のためになり、ひいてはお客様のためにもなるのだから」
送別会ですから、当然褒めてもらえるものと思っていたのでショックでしたが、その上司は私がお客様にただ調子を合わせて会話をしているだけで、真の「対話」をしていないと感じて、あえて厳しいはなむけの言葉をかけてくれたのかもしれません。それからは自分がどういう立場であっても、会社を代表してお客様と話をしているのだと、常に意識するようになりました。
仕事の場での交渉や面談などで重要なのは、相手をよく理解した上で対話をすることだと思います。人となりや背景、対象となる事業の状況などを事前に把握しておくことが、信頼関係の構築につながります。たとえその場では直接的なビジネスにつながらなかったとしても、その出会いが「サムシングスペシャルだった」とお互いに思えれば、会社にとって資産となり、将来にもつながります。
対話とは常に真剣勝負で、自分自身との戦いでもあります。経営トップに就いてからは、国内外の企業のトップや各国の指導者とも何度も面談の機会を持ってきました。毎回、どのような交渉の流れになっても対応できるよう、必要な情報をすべて頭の中にたたき込んでおくなど、綿密な準備をして臨んでいます。
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